「濃密で心に突き刺さる"The Film"」バビロン talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
濃密で心に突き刺さる"The Film"
ラ・ラ・ランドはなぜかあまり好きになれませんでした。でもこの映画はとても好き。
構成もキャスティングも衣装も台詞も演技もスピード感も歴史背景も「セット」も音楽(アレンジ!)も全てが熱い映画愛に繋がっていてとても良かった。上映時間はRRR超えだったが1秒たりとも無駄なシーンがなかった。
ブラピと同じ時代に生まれたことを心から幸せに思った。洋画好きの父が映画の話をする時によく挙げていた女優の名前(グロリア・スワンソンとかグレタ・ガルボ)がブラピの声でブラピの口から発せられたのを聞くことができただけでもう幸せだった。ブラピの役がイタリア出身設定なのでイタリア語をちゃんと喋っていて「イングロリアス・バスターズ」のリベンジができた!一方で1920年代、ヨーロッパはバウハウスだ、なんで未だに僕らは時代劇やってるんだ!これは映画を愛するジャック(ブラピ)の心からの言葉で身に沁みる。そして映画評論家のエリノアがジャックに伝える言葉は辛いけれど真実。溝口・小津・黒澤監督、そして山田五十鈴や田中絹代や京マチ子が居た世界をこんな「バビロン」的フィクション映画に誰かしてくれないかな。
マーゴットはこういう役がぴったりで彼女以外に考えられない。彼女の代表作の一つになると思う。ディエゴ演じる役は一途でピュアなところが最初から最後まで全くぶれなくて映画に愛された天使だった。冒頭から最後までとにかくかっこよくていい映画だった。チャゼル監督&作曲家ハーウィッツ、素晴らしい!
おまけ
サントラCDを入手しました。20年代の音楽(例えばMax Raabeのような)的に敢えてしなかった監督とハーウィッツの気合いと憧憬を金管が吠えつつ羽毛のような優しさで私達を愛してくれる。ワーグナー(トリスタンかな)もムソグルスキーもボレロもタンゴもワルツもハワイアンもロッキーも居る。聞いてるだけで泣ける、踊る。大音量で聞こう!