「本来裏にあるべき物語が消滅している気がする」ノー・セインツ 報復の果て つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
本来裏にあるべき物語が消滅している気がする
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ポール・シュレイダーの脚本は表と裏がある作品が多いと思う。見えているものだけではなく、その奥に潜む物語に面白さがある。
本作にもそんな含みはあると言っていいのだろうが、少々真っ直ぐ過ぎて、本来裏にあるべきものが表になってしまった印象だ。
冒頭に、親の罪は子に報いるとテキストが出る。拷問師と呼ばれる主人公は各方面から恨みを買っている。そんな男の罪が息子に向くわけだ。
息子の書く父親の絵。それは神を模したものにも見える。息子にとって父は「聖人」なのだと分かる。
しかし、それ以上の深堀りがなく、極端な話、大した意味をなしていない。
結果、単なるバイオレンスアクションのような作品になってしまっている。
コチラとしてはポール・シュレイダー脚本だから見ているのにこれでは肩透かしである。
元の脚本ではもっと何かあったんじゃないかなあ。尺を詰めたせいで本来あった含みが消滅したんじゃないかなあ。そんな気がしてならない。
実に勿体ない。
とりあえず、退屈な作品というわけではないので問題なく観ることはできた。
キャラクターが良い。容赦がないところもいい。
逆に言えば救いがないわけで、甘い物語が好きな人には合わないだろう(甘い物語が好きな人はこの作品をそもそも選ばないだろうが)
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