劇場公開日 2023年11月10日

「繋がりたいけど繋がれない私達に向けた物語」正欲 コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0繋がりたいけど繋がれない私達に向けた物語

2024年7月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

単純

興奮

内容は、主要登場人物の五人が織りなす立場と性癖と人間模様の中で、それぞれの小説をミステリー形式で最後にまとめ上げる作品。
 印象的な台詞は『1人でないとええね。』桐生が佐々木に話す言葉。お互いの性癖に辟易している2人が共感覚を大切に思いやる場面が方言もあり温かく印象に残った。
 印象的な場面は、主要人物の若さが気になりました。若気の至りとも思える其々のキャラクターの原風景はそれ程ひた隠しにするものでもない様な気持ちになりました。しかし自分もそうですが若い時は視野狭窄になりやすいので仕方ないですが、もっと内省的な心の機微がみたかったです。
 印象的な立場は、三幕構成の三段目にいきなり矢部陽平という小学校の先生を持ってきてオチに向かう所です。その間ミスリードのオンパレードで、くどすぎました。子供が好きな先生が、好きな子供と遊ぶのはいつもの事ですが時代が悪かった。現代ぢゃなきゃ大丈夫だったのに世の中の流れに羨むばかりです。
 大多数の人が、少数派に分け入る様な構図の物語。普段と逆の見方が出来る作品は面白いと感じますが、少し短絡的な感じが否めず熱い芝居が逆に引いてしまいました。
 最後の終わりにも扉に正面に向かう検察官の寺井を映しながら扉が音を立てて閉まる場面は、分かり合えない人間の描写で、視聴者に考える余韻を与えない寂しさが、後味を悪く変えてしまった様に思えてなりません。

コバヤシマル