「理解されなくていいが、理解されないという苦しみは存在する」正欲 あおねるさんの映画レビュー(感想・評価)
理解されなくていいが、理解されないという苦しみは存在する
これは自分自身がセクシャルマイノリティの人間だから共感できた作品なのかもしれません。
そうでなくとも人間は誰しも何かしらの性癖や欲を抱えて生きているものだと思っていますし、人から理解されにくいことに対しての苦しみが痛いほど伝わります。
自分はアセクシャルの人間なので、性的欲求がありません。かといって恋愛ができない人間なのかと問われれば、アセクシャルは性的欲求がないだけで恋愛自体に興味がないわけではないので、お付き合いをした経験はあります。
残念ながら未だ「結婚(もしくは恋愛)していない人間は不幸せ」という風潮が根強く、「恋人いないの?」「結婚しないの?」という質問に疑問を感じたり、苛立つことがあります。
人間は必ずしも誰かと恋をし、結婚し、子供を産み育てなければいけないのか。
恋人が自分にいなかったり結婚していないことに対して悪態をついたところを「妬ましい」と思っていると勝手に解釈され苛立つ主人公の気持ちに共感しましたし、車のシーンもそうですが、実際にあんな風にもうどうにでもなれと突発的な行動を起こしたくなる気持ちも理解できました。
これはあくまで個人的な意見ですが、特殊性癖を抱えていることや他人から見て変わった欲があること、セクシャルマイノリティに属していること自体が悪いとは思いません。
性癖が犯罪に繋がってしまうことは断じて許されることではありませんが、人様に迷惑をかけずただその性癖を抱えているということは悪くないと思います。
それは人知れず抱えたそれに本人が一番苦しめられているかもしれないから。
何が「普通」なのか。人は「普通は」とよく口にしますが、その多くの人が口にする「普通」ってなんなんでしょう。
それが繊細に描写されている作品でした。