「八重子と大也がよかった。」正欲 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
八重子と大也がよかった。
性欲の対象が水である。
この設定は社会異常と設定された性欲の例えとして置かれたのかなぁと思って観た。
理解されなかったとしても、水に欲望しても他人に実害はないし。でもそれが、子どもだったり、動物だったりすると、欲望を抱くことさえ異常視されるかも知れない。
役者について
磯村勇斗さんは、月でもハードな役を演じていたし、連ドラではジルベール・渡となり、わさビーフを食べて狼コスプレとかして、本当に振り幅の大きい役者で、今回も素晴らしいなと思った。
新垣結衣さんは、パブリックイメージとかけ離れた正気のない感じがすごくよかった。
稲垣吾郎さんは、怒鳴るところ初めて見たかも…嫌いなタイプの人を演じてたので嫌いになりそうだった(褒めてるつもり)。
まぁこのお三方は実力もキャリアもある折り紙付きの役者であり、今回も良かったなと思ったわけです。
で、びっくりしたのは八重子と大也役のおふたりでした。わたしは初めて観たふたりだと思います。
大学の大教室でふたりが対峙するシーンは、すごかったです。
とくに八重子役の東野絢香さん。電車の壁際で身を縮こまらせていた登場シーンから、こういう人いるっていうイメージがぶわっと湧く姿をされていて、すごかった。視線の定まらなさ、唇が窄んでいる感じ、猫背…
重い過去を思わせる表現が素晴らしく、大教室のシーンで大也にぶつかってゆき、彼の正気のない眼に光を浮かび上がらせたシーンは本当にすごかった。
大也役の佐藤寛太さんも初めましての方で、ガッチガチに踊ってはったけど劇団EXILEの人らしくなるほどです。彼も珍しい性的嗜好ゆえに人を遠ざけ絶望を抱えて生きてるんです。その彼が八重子の不器用な叫びに呼応して、束の間眼に光を灯すんですが、とても素晴らしかったです。