「肝心なところにリアリティが感じられなかったのは残念としか言いようがない」正欲 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
肝心なところにリアリティが感じられなかったのは残念としか言いようがない
最初は、地味で、暗くて、無愛想な新垣結衣はうまくいくのだろうかと危惧したが、思いの外、違和感なく受け入れることができた。後半の契約結婚は、「逃げるは恥だが役に立つ」を彷彿とさせるが、理解し合える人と一緒に暮らす時の幸せそうな彼女の表情には、やはりホッとさせられた。
それにしても、タイトルの「正欲」は、その響きから、てっきり「性欲」と絡めているのかと思ったが、2人は、単に「水」に魅力を感じているだけで、性的な興奮を感じる訳ではないし、ましてや、恋愛感情も性的な欲求もないということには、少なからず違和感を覚えてしまった。
もし、それが本当ならば、人に隠さなければならないような恥ずかしい嗜好ではないだろうし、「明日まで生きていたくない」と思ったり、「朝起きたら違う人間になっていることを願う」ようなことでもないと思えるのである。
それから、男性恐怖症の女子大生が、どうして水フェチの男子大学生だけには拒絶反応が出ず、彼を好きになってしまったのかもよく分からない。
そういうものなのだと言われれば、そうなのかもしれないが、かえってフェティシズムや不安障碍を歪曲しているようにも思えるのである。
それから、まったく証拠がないのに、小児性愛者として逮捕され、検察の取り調べを受けるということも、現実ではあり得ないだろう。被疑者となった夫やその妻が、自分たちが「単なる」水フェチであるということを、堂々と主張しないことにも歯がゆさを感じてしまった。いくら、「どうせ理解してもらえないだろう」という諦めがあったとしても、犯罪者に仕立てられようとしているあの場面で隠すようなこととは、どうしても思えないのである。
人と違うことに負い目を感じ、生きづらさや疎外感を持って社会生活を送っている人々の孤独と、共通の価値観を持ち、互いに分かり合える人と繋がることの素晴らしさを実感することができる映画だっただけに、そうした描写にリアリティが感じられなかったのは、残念としか言いようがない。
コメント、ありがとうございます。
そうですか、原作でも同じように描かれているのですね。
ただ、全体的には、「普通」とは何かということを考えさせられるし、他人と分かり合えることの喜びを感じさせる映画になっているので、興味をお持ちであれば、観賞されてみてはいかがでしょうか?
映画未視聴です。
先に小説を読んでしまい、ひた隠す様な嗜好でないという所と犯罪者になってしまうのに、それでも相手に理解してもらえないからと諦める所に違和感、リアリティが感じられなかったです。
この物語がどの様な作品に作られたか気になり観るか検討中ですが、配信サービス待ちのが良さそうですね。