「ただの会議なんですよね、議題以外は。」ヒトラーのための虐殺会議 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
ただの会議なんですよね、議題以外は。
ホロコーストを扱った「別角度」作品の一つと言って良いのではないでしょうか?実際の議事録を元に作ったそうです。ですから、映画として云々・・・というよりも、会議が行われたという事実と、その場で話された内容を多くの方に届けるという意味合いで、大変重要な作品だと思います。故にとっても興味深い作品になっていると思います。
その会議の経過を通じて当時のナチスドイツの軍、役人の力関係や個人のパーソナリティをうまく散りばめ、さながら池井戸作品の「企業モノ」みたいな感じ(笑)・・・けど、これってとっても恐ろしい議題について、皆冷静かつ建設的に話し合っているという・・・薄寒い話なんです。
会社の効率的な会議のお手本ですよ、これは。根回し、議事進行、決を取るための周到な準備。素晴らしい。90分で終了した理由がよくわかります。みなさん、優秀!
けど・・・議題は・・・・悪魔のそれです。
方針を誤っている独裁者やカリスマやリーダーが居るってこういうことなのね?って感じです。ロ◯アって北◯鮮って、某巨大国の重要会議ってこーなんだろうなぁ、、、、なんて思っちゃいました。だって、誰一人、このおかしな議題への疑問を持たないんだもん。すごい。
ほんのちょっとでもヒューマニズムや人としての葛藤を期待している自分がいましたが・・・現実ってそんなに甘いもんじゃないってね。
作中ではユダヤ人を表す言葉がまぁひどいです。でも、そういう扱いだったってことだもんなー。会議の中では、たくさんのホロコースト映画で描かれた虐殺までのプロセスが話し合われます(こいつらが決めたのか・・・)。仕事の一つとして話されます。呆気に取られるくらいに命がぞんざいに扱われます。まさにゴミのよう。敗戦後、「ヒトラーの指示に従っただけ」って言って戦犯逃れした人はたくさんいたのでしょうが、この映像を見ると「いやいや、虎の威を借る狐だって犯罪者だぜ」と言いたくなります。ナチスドイツの全責任者を処しても良かったんじゃ?
もっともっと演出をぶち込めば大作になりそうな作品。けど、このフォーカス具合が良作となり得ているのかも?