劇場公開日 2023年1月20日

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「「忠実で優秀」な部下」ヒトラーのための虐殺会議 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「忠実で優秀」な部下

2023年1月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

第二次世界大戦中の1942年1月20日、ベルリンの高級住宅地、ヴァン湖(ヴァンゼー)畔にある親衛隊の所有する邸宅で開催されたこの会議、議長であり進行も務めるのは国家保安本部長官ハイドリヒ。会議で決議されることはその後の歴史が語る通りなのですが、これだけのことが僅か90分ほどで「全会一致」で決められたことに改めて驚かされます。
勿論、出席者はそれぞれ自らの領域における責任者、代表者であり、譲れない部分を持ち合わせての参加なのですが、ハイドリヒが次々と懐柔していきます。そして、そのハイドリヒの助けとなるのが上司に対して「忠実で優秀」な部下、アイヒマンの存在です。アイヒマンは事務方として、この会議の準備だけでなく、会議中において「作戦についての計画とエビデンス」を淡々と説明しつつ、また、関係各所を納得させる落としどころまで押さえた「目配せ」を忘れません。
それにしても、書記を務める秘書の女性を含めた出席者16名の様子はとても「1,100万人の命を奪う計画」を決める会議とは思えないほど、皆「平然」としています。異を唱えることも結局はナチスの利益と自らの保身。これぞ、まさにハンナ・アーレントの評した「悪とは、システムを無批判に受け入れることである」だと認識しました。
ただ、正直引っ掛かることもあり帰りにしみじみ考えたのが、自分も仕事で難しい立ち位置であるる状況にいるとき、「スタンスの取り方」や「アウトプットの仕方」などで目を瞑ったり、誤魔化したりしてないかなということ。私もハンナ言うところの「凡庸な人間」であり、たまにはこういう映画を観て、我が身を振り返ることの必要性を感じました。

TWDera
TWDeraさんのコメント
2023年1月24日

戦況も異なるとは言え、単に会議という部分でクローズアップすると、『日本のいちばん長い日』とは全く異なる部分(原田さんの作品は悪くないけど)国民性の違いを感じますし、また、こういう作品を見るたびについつい比較として、現代になってもまだどこか、歴史を単に美談にする日本の「軽さ」を感じてしまいます。(左寄りに言うつもりはなく、素直にそう思う)

TWDera
いなかびとさんのコメント
2023年1月24日

議事録を作成者がアイヒマンと知り、あのアイヒマンか思いました。
ハンナ・アーレンとが凡庸な人と発言して物議を交わした。
アイヒマンの上司、ハインリヒ・ミュラーは失踪し、生死が分かりません。
彼は生き延びたのだろうか。もし、生き延びていたのなら、それも映画になりますね。

いなかびと