福田村事件のレビュー・感想・評価
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100年前の現実を受け止めよ!
関東大震災のような考えられない事があると、信じられ無くなるのか?この様な事になるのかと思うと非常に怖い。100年前の惨劇をしっかり受け止め後世に!二度無い様に!
見るべき価値のある映画。
平日の10時台の上映に行ったがほぼ満席。連日続いているとのこと。このような映画に関心のある人がたくさんいるのだ。 関東大震災の朝鮮人虐殺とともに、売薬の行商団の同じ日本人を朝鮮人と決めつけ虐殺した本当にあった事件をもとに映画化したもの。その事件の様子はリアルで迫力があった。 ルポライターの辻野弥生さんの本が元になっている。 単にそのときだけの人間の心理状態がそうさせたのではなく、そこには軍部や元軍人の力、戦争、出兵、韓国併合、朝鮮半島での独立運動激化、日本人と朝鮮人労働者、天皇制、民主主義、社会主義への弾圧、言論統制などがさまざまな形で日本人の心を歪め、朝鮮人への恐怖心、差別意識が醸成されてきたのだ。それは、どこにでもある日本の日常生活の中に潜んでいた。 常識ある冷静な人たちも出てくるがそれは少数で、力で押さえつけられる。 朝鮮人なら殺してもいい。 それにしても100年前の事件がひた隠しにされ、殺害した住民も自分たちは国のために国の通達で自警団を結成し自分たちの地域のために立ち上がったのだと。 見たこともないのにデマを流し続ける人たち、国もそれに加担する。真実を伝えるべき新聞社も正面切って立ち向かおうとしない。若い記者が自分が実際に見てきた事実を記事にすることも待ったが掛かるという葛藤。 映画を通してこのような事件を初めて知った。森達也監督に感謝である。 永山瑛太、東出昌大、豊原功補、松浦祐也らが迫力ある演技をしてくれた。中でも、大正期の井浦新とその妻、田中麗奈が大人のエレガントな女性としてひときわ目を引いた。広島を舞台とした「夕凪の街 桜の国」(2007年7月)から16年経ったのだから。
今を生きる私達が観るべき、識るべき重厚な一本
1923年9月6日 100年前の今日 福田村事件が起きた 公開中の森達也監督の映画で初めてこの凄惨な事件を知った。 関東大震災の騒擾の中で香川県の薬行商人の集団15人のうち幼児や妊婦を含む9人が、福田村(及び田村村)の村民により虐殺された事件だ。 大杉栄などの社会主義者や多くの朝鮮人がデマによって殺害されたことは有名だが、この事件も朝鮮人と疑いをかけられ、暴走する集団心理の狂気によって発生した。 朝鮮人差別だけではなく、部落差別、職業差別と重層的な差別構造が招いた事件だと思う。 100年立って日本人が理性的に進化を遂げた訳ではなく、人間である以上他者をラベリングし、異質なものを排除する性質は変わりはない。 今でも十分に起こり得るだろうし、自分が集団の中で加害者になることもあり得るだろうと思う。 そしてパンフレットが分厚い。 (映画とパンフレットはセット!) そこには事件を25年に渡り追い続けた研究者がなんと映画の創りを批判する内容も載っている。曰く、史実とは異なる。 確かに、この映画は切り取り方によって功罪両面があるかもしれない。 しかし、今を生きる私達が観るべき、識るべき重厚な一本であることは間違いない。 柄本明、井浦新、田中麗奈、豊原功補、永山瑛太、東出昌大、カトウシンスケなど、名だたる俳優が集結しているのも頷ける。
きさまも悪魔かもしれんな、おい
史実をもとにしたフィクションなので、誰が殺されるかはわかっているのに、いよいよ殺られるというところまでは「朝鮮人と間違えられないでくれ」と思ったが、 「朝鮮人なら殺してもいいのか!」という行商人の叫びでハッと「否」と気づいた直後からの虐殺。 脚本・演出・役者の仕事にまんまとしてやられたとも言い訳できるが、ここは素直に自分を恥じたい。 人種性別職業出自いかなる理由であれ差別、ましてや殺人などは絶対に許されない。 平時ではそう思っている。 しかし条件が重なってしまうと、思想とは真逆の行動をとる可能性がある。悲しいかな私たちには。 拙文のタイトルは永井豪の漫画「デビルマン」の一節。国が作った「悪魔狩り部隊」が人間の中から悪魔をあぶり出すのだが、見た目では人間と悪魔、ましてや悪魔と合体した人間「デビルマン」の区別はつかないので、今作「福田村事件」と同じく、結果的に無差別殺人となってしまう。 差別を防ぐ努力は大切だと思う一方で、歴史は所詮繰り返すという諦念感を少なからず私は持っている。今般のSNSを眺めるだけでも、残念ながらその思いは増長する。 それでも、少しでもこうした悲惨な事が起こる可能性を下げるためには、「個の確立」以外にないと私は思う。回りの目ばかり気にして同調圧力に屈しない気構えが必要だ。大切な人を守るためには、知恵も必要。批判覚悟でいうと、「殺すより、殺されるほうを選ぶ」ことも必要かもしれないとまで思っている。 新しい映画ではなかったが、普遍的なテーマが冷徹な視線で描かれていていい映画だと思います。 特に水道橋博士には助演男優賞をあげてもいいんじゃないでしょうか。怪演でした。
100年前に起きた実際の事件だが、現代の日本で起きても全くおかしく...
100年前に起きた実際の事件だが、現代の日本で起きても全くおかしくないし、姿形を変え実際に起きている。 エグミ・ヤダミ・後味の悪さと、自分が被害者にも加害側にもなりうる怖さ。ありきたりな意見だが、今この時に見るべき作品。
劣等感と同調圧力と無知
私は6歳から東京、千葉に住んでいたのに福田村事件や亀戸事件の事を聞いたことがありませんでした。関東大震災後の朝鮮人虐殺について知ったのは10代半ばの頃で、朝鮮人が井戸に毒を入れたというデマが飛び交ったから、というもので、当時はどうしてそいういう発想になるんだろうと不思議でしたが、恨まれる心当たりがあったのだとは思い付きませんでした。朝鮮人だけでなく間違われた人やどさくさ紛れの殺人まで行われていたことにも驚きました。 差別は劣等感の裏返しではないかと思っています。 本作では、無知によって不安が増幅されて、集団パニックが起こる様子が語られています。正常な判断が出来なくなり、ごく平凡な人間が狂気に支配されていきます。 これは日本人として、人として、知っておくべき事件です。 映像作品としては、地震の再現はあれで良かったと思いますが、関東大震災をよく知らない人が理解できるように、被災の状況がどれだけ悲惨だったかの描写がもっと欲しかったところです。 あと、登場人物が多いけれど見た目が似通っているので、途中まで人物の区別がつけにくかったです。 智一はまた教職に就いてほしいなと思いました。
意義は大きい
「過去のこの国の汚点を知る」「人の愚かさ」「集団心理の怖さ」「思い込みから事実確認しないまま暴走することの危険性」を示し、学ぶにはいい教材的な内容。 抑えられつつ効果的な音楽とも相まって、残酷な史実を浮き彫りにしていました。 関東大震災において、日本人の自警団たちが、韓国(朝鮮)人、訛りのある地方人、被差別集落民、社会主義者らを数千人規模で虐殺した史実を、警察や政府資料に記録が残っているにもかかわらず、(現政権与党や東京都知事などが代表的で)「見たくないものをなかったことにしたい」「政治的に利用しやすい方向へ歴史を修正しようとする」動きを牽制する意味では、作られた意義は大きい。 そして、直接手を下していないものの、見ていることしかできなかった傍観者も同罪であり、歴史を知らないままでいた観客にも他人事ではない、という事実を突きつけてくる。 ただ、本事件に関しては背景に差別問題があることで、関係者たちが多くを語っていない。 僅かな裁判資料と、事件の被害者側の生存者で当時子供だった人が晩年語ったことくらいしか記録がなく、詳細がわからない。 そんな中で、ドキュメンタリーの手法で物語を構成することで、すべてが本当のことのように錯覚させられてしまうという点については、多少疑問も残る。 それと、監督の政治的主張がにじみ出るシーンやセリフがいくつかあると感じ、感情誘導しようとする表現がストレートすぎて拙く、そこにひっかかりを覚えました。
若松プロ系製作の影響が大きすぎかなぁ
森さんの作品ほぼ全作観てます。 本作品が完成して、アーカイブされる意義はとても大きいと思います。 ただ作品としては、森監督ファンとしては今一つ。 冒頭から主題と関係ない情話が何度も出てきて冗漫、いつもの早いテンポが無い、登場キャラも登場からそのままのキャラで、いつもの意外な行動やキャラ変も皆無。初劇映画では製作社の影響が大きすぎて、まあ定型の独立系邦画でした。 劇映画よりドキュメンタリーの方が予見し難い面白さがあるので、次作はまたドキュメンタリー撮って欲しいです。
堪能できる映画 絶対見るべき
久々に、堪能できた映画。人物造形に厚みがあり、当時の日本人の様々なタイプが想像できる。外地育ちの奔放な若妻を演じた田中麗奈の演技が素晴らしい。映画として堪能できるうえに、歴史の教訓として学ぶべきことが沢山ある。新聞の責任もきちんと取り上げていてよい。この手の映画にありがちな生硬なアピール調もなく秀逸。関東大震災の混乱に乗じた官憲、民間人による朝鮮人、社会主義者の虐殺をなかったことにしようとする人々がいる現在、多くの人がこの映画を見て、歴史を消そうとする人々のデマに警戒心を持ってほしい。
「内務省からの通達」
もっとドキュメンタリーっぽい仕上がりなのかと思っていたが、当時の暮らしぶりを上手くストーリーやキャラクターに乗せていて、匂い立つような陰湿な空気感がスクリーンから伝わった。 細かな数字やエビデンスについては別の議論が必要だと思うけど「この人たちと同じ血が自分にも流れているのだ」と言う事を気付かせてくれただけでも見た甲斐があった。 この時代に生きた人たちは、この後「大本営発表」と言い方を変えた御上の伝達にまた苦しめられる事になる。 それと、東出さんの演技が珍しく光っており(失礼)、なんて言うか役者っていうのはなんでも芸の肥やしになるんだな、と思った。
世にも恐ろしい事件が何故起こったのか?それを知れるだけでも見る価値有り。
関東大震災後の混乱の中で、在日朝鮮人へのデマが流れる。 「あいつらは日頃イジメられてるから、この混乱に乗じて屋敷に火をつけたり、井戸に毒を流したりしている。朝鮮人を見つけたら殺せ!」 そういった世論の中で、部落出身の行商人が朝鮮人と勘違いされて、村人に襲われてしまう・・ なんとなく聞いたことはあったけどよく知らなかった事件だが、映画を見ると当時の社会情勢や雰囲気を感じられてよくわかる。 映画としては中盤まで続いた、事件と関係のない村での情事。これが長すぎた気がする。 あと疑問だったのが、行商人側が朝鮮人と間違われそうになり、一触即発の場面なのにやけに大人しかったこと。部落出身なので差別されるのを諦めてるのか? 役所の証明書を待ってくれと言うなり、謝って立ち去るなりできそうな気がした。 面白くはないけど、見る価値ある映画だと思う。
あたしの名前は!!!
恥ずかしながらこの事件の事を知りませんでした。 無料パンフをゲットした際、珍しくちゃんと全部読みまして。。 わずかなその序説だけで、ゾクッとしたんです。 え。何で。こんな事件があった事を知らずにいたなんて。。 すぐに関連書籍を調べて、唯一ヒットした、辻野弥生先生の「福田村事件」を購入し読みました。 先生が千葉県で関東大震災の取材中に野田市のある住民から、福田村事件について書いて欲しいと依頼されたそう。 地元ではこの事件はタブーで、 「野田の人間ではあと50年は書けない」と。。 映画のEDでも説明されていたように、事件の事は活字で残された物はほぼなく、皆、口を塞いでいたそう。 「これ以上事件を蒸し返さないでほしい」 「せっかく忘れかけていた事なのに」 などの声も多く、取材中はかなりの葛藤とご苦労があったそうです。 そんな中、わずかに残る当時の新聞を頼りに取材を重ね、2013年に書籍化! (しかし、出版元の廃業で絶版に。。) そんな過程を経て、関東大震災から100年目にあたる今年の6月に再販が決まり私も手にする事が出来ました。 当事件の映画化で注目されたのもありますね。 福田村事件について記された貴重な本なので、機会があれば是非読んでみて欲しいです。 さて、本作なのですが、あらすじが全てなので敢えて書きません。 災害などの非常時に流言が発生し広がる理由として「急な不安」が大きな要因だと思います。 そして、その不安の蓄積や流言の広がりが、弱い立場の人々への攻撃に変わっていく様は、悲しいかな100年前の人事ではありません。 それこそコロナが感染拡大した時は世界中が一気に不安になったし、感染してしまった方々への暴言も聞かれました。 不安を抑える為なのか、誰かを攻撃する事へと向かう心理状態は現代人も同じだ。 そして権力のある側に加担し、情報操作したり、真実を報道しない新聞社。 (マスコミ) これだって今のJ問題に通じる所があると思う。 歴史って。。 人間の過ちの過程を知る事ができる教科書だ。 よく「悲惨な歴史は繰り返すな」みたいな文句を耳にしますが、きっちりしっかり過ちを繰り返し続けて今に至っていると思います。 しかし、今の日本でこの題材をとりあげ、映画化したことは、大変意味のある事だし、製作陣の勇気を感じます。 現に私も知る事ができました。 映画として考えると。。 主人公(新ちゃん)の役割?が薄い。。ん?違うな何だろ?必要性かな? PTSDについても、例えば、フラッシュバックに苦しむ様子や悪夢でうなされるシーンなどがあれば、説得力が増した? 4年間も妻(麗奈ちゃん)にさえ告白できなかったのに、その過去のトラウマを語るシーンも若干物足りない。 瑛太はそのイケメンがやや邪魔になったか。。 コムアイちゃんはすっかり女優さん。 良い味出してました。 そしてまさかの! 東出君が色気ムンムンでビックリしたw お久しぶり。こちらも色っぽい麗奈ちゃんを何の躊躇もなく頂いちゃうのは好きでしたw 登場人物が多いですが、それぞれの背景や立場による考え方の違いなども丁寧に描かれていました。 集団心理による普通の人々が鬼畜になっていく様子もリアルでした。 自分も、あの時代の福田村の住人だったらと考えた時。。 ヤらないとヤられる。。 当時の人々が襲われたであろう恐怖が想像できてしまいます。 よく、この手の作品は、 若い人に観て欲しい!と言われると思うのですが、イヤイヤ、今の若い子の方がよっぽど柔軟だし、グローバルだから! 私のような40代〜の頭の固い世代こそ思考のアップデートをすべきですわ。 出どころ不明なデマに踊らされパニックになり、とり返しのつかない事をしでかすのって。。 この世代じゃん。。と思ってしまうのも偏見でしょうか。。^_^ しかししかし! レイトショーで鑑賞しましたが、先輩方で大入りでした。 上映後、若干思想強め?の方2名ほどの力強い拍手におののき軽い尿漏れw (ウソです笑) いや、でもやっぱり! こんな事実があったという事を知るだけでも価値がありますので、全ての年代に観て欲しい作品です。
怒りと悲しみで涙が止まらない
何が起こるか分かっていたけれど、その理不尽さと、そう仕向けられていく人々に怒りと悲しみが止まらない。 人々が恐怖やデマや集団心理で、狂気に駆られていく姿は、漫画の「デビルマン」の最終章や、名作小説から映画化された「蠅の王」にも通じる。 そして、流言飛語の元となる群集心理を作り上げていく、警察、軍、政府、報道。「ジャーナリズムは権力を監視する」という本分を忘れ、権力側のスポークスマンになってしまう新聞の罪深さ。 こんなひどいことが行われていいはずがないと感じる一方、マスコミやジャーナリズムは今もこのときと変わっていない。権力側に都合の良いニュースしか流さず、都合の悪いニュースにはだんまりを決め込む。綿々と今に続いている問題だと思う。 現代においても、同じ問題は起こりうるし、戦争で人を殺すことが愛国であると思わされてしまいそうで怖ろしい。 小規模上映だが、クラファンで制作されたとのこと。このような映画をこれからも世に出し続けられるよう、また、映画としても非常に良く出来た作品のため、多くの人に見て欲しい。重く苦しいが、緻密に重ねられている多数の人の視点と感情がドキュメンタリーではない、素晴らしい劇作映画として心を打つし、おそらく今後高く評価されると思う。 また、個人個人丁寧に描かれた俳優陣が全員とても素晴らしいが、特に永山瑛太と東出昌大は役にぴったりだし、井浦新と豊原功補の立ち位置は、正当だけど腰が引けるという自分に一番近い人間かもしれない。水道橋博士は最後まで分からず、大変な役者ぶりだった。必見。
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