劇場公開日 2023年9月1日

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「男の面子とかいうもの」福田村事件 ミカさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0男の面子とかいうもの

2023年10月12日
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鑑賞方法:映画館

以前、アウシュビッツビルケナウ収容所を訪れた際に初めて知ったこと。それは、一番初めに収容所に入れられたのが、大学教授などのナチスに反対する知識人達ということでした。それが徐々に共産主義者、社会主義者、ユダヤ人、ロマ、同性愛者などに広がっていったそうです。だから、ホロコーストはユダヤ人の人種差別問題ではありません。

福田村では、朝鮮人だからという理由で村人による人殺しが正当化されていました。一方東京では、社会主義者だからという理由で国家による人殺しが正当化されていました。本作を鑑賞していると良く分かりますが、多数派や権力による人殺しが正当化される時には主たる理由は必要ありません。髪が長いからとか、髭をはやしているからとか、なんか怪しいからとかそんな感じです。

しかし、朝鮮人や社会主義者を直接的にも間接的にも殺した日本人は、後の第二次世界大戦では自分達が殺されることになりました。その頃には、澤田や田向の様な民主的な人間やファシズムを止める人間はもう居なくなっていたことでしょう。大衆は、日本軍の無茶苦茶な命令に従うことしかできず、300万人以上が犬死しました。これが、直接的にも間接的にも人を殺した結末です。

劇中、長谷川が村を守るために(朝鮮人を殺せ)と言ってましたが、あれは嘘です。軍隊は、権力の面子を守るためだけにしか動きません。長谷川は殺した旅人が朝鮮人ではなかったことに酷く動揺しましたが、これは殺した人間が日本人だと、自らの面子が保てないためです。

だから、私は男の面子というものが大嫌いだし、ホモソーシャルな集団も大嫌いです。

日本社会全体がホモソーシャルなので当たり前ですが、昨今でも東京五輪や大阪万博、その他たくさんのことが、ホモソーシャルな集団の面子を守るためだけに行われ、これからも行われようとしてます。そもそもの行動原理が面子のためと自分の利益なんで、このまま放置するとあの敗戦と似た様なことが何らかの形できっと起こると思います。だから、私は想像したいのです。劇中で殺された人達は、実は私の分身だし、彼らの面子のために酷い目にあうのは私なのだと。

コムアイさんと東出さん、大好きになりました。どんどん映画に出て欲しいです。

ミカ
レントさんのコメント
2023年10月23日

最近特に素朴な疑問として感じるのは、男女間に能力差がないのに、女性が活躍する機会が奪われてる社会って、物凄く資源を無駄にしてるなあということです。例の医学部入試の問題もそうですが、優秀な女子学生がはじかれてその能力に劣る男子学生が受かってしまう、これって明らかに社会にとって損失ですよね。こういったことが社会全体に起こってるからこの国は30年以上成長してないんじゃないかなとも思います。
まあ、経済成長だけを重視するつもりはないですが、より良い社会になるにはあらゆる立場の人を尊重できるくらい余裕がないとだめなんだなあと思います。
ただの独り言ですのでお返事結構ですよ。

レント
レントさんのコメント
2023年10月23日

差別をしてる連中はまわりまわって自分たちの首を絞めることになるのに気づいてないんですよね。
国会議員の半分が女性であるのが理想というか民主主義国では当たり前のことですよね。今年のG7、男女共同参画女性活躍担当相の会合で参加した閣僚が日本だけ男で周りを女性に囲まれている姿を見てほんと情けないと思いました。

レント
レントさんのコメント
2023年10月23日

おはようございます。安保法制、学術会議任命拒否問題、まさに歴史は繰り返される、でしょうか。
東京五輪、大阪万博、メンツだけを気にする者たちにはいったん立ち止まって引き返すという英断を取れないのでしょうね。いったんおっぱじめた戦争をすぐには止められないように。その間でも取り返しのつかない被害が拡大してゆくというのに。
子飼いの女性議員に自分たちの本音を言わせて悦に浸ってる与党の重鎮たち、いまの政治はまさにホモソーシャルであり、だからこそ今のままでは未来は切り開かれないと絶望してしまいます。
今の日本社会を見ていてマルティン・ニーメラー氏の言葉がつくづく胸に刺さります。

レント