「ヒトという動物の醜悪さが上手く描かれている」福田村事件 toyotoさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒトという動物の醜悪さが上手く描かれている
ダンサー・イン・ザ・ダーク(私にとっては、美しかったけど吐き気がするほど辛くて心にガッツリ残っちゃった。次は観ない。)みたいなトラウマ映画じゃないと良いな、と思いつつ、田舎の単館上映映画館へ。
平日の日中にも関わらず、50人ほどの観客が!普段は多くて4〜5人しか入っていない劇場なのでビックリ!年齢層はとっても高くて、平均70才くらいかな(私が一人で平均年齢を下げている感じ)。
誰が出演しているのかとか全然リサーチせずに観たので、好きな有名俳優さんがたくさん出ていたのが意外でした。
動物種としての「ヒト」の凶暴性や醜悪さが上手く描かれているなと思いました。
終盤の演技が心に残っています。アメ売りの少女の「私の名前はー」のシーン、頭領の「朝鮮人なら殺してもー」のシーン、学ぶことが好きな子の「私はなんのためにー」のシーン、村長の「私は止めたんだー」のシーン、亡くなった仲間の名前を言うシーンなど、どれも良かったです。
私は、子どもの頃から社会が大の苦手で、特に歴史なんて大嫌いだったので受験は倫理政経で乗り切った根っからの理系なんですが、最近、子どもが受験用にお風呂に年表を貼っているので歴史年表を見る機会が増え、「ヒトの歴史って常に戦ってるなぁ。2000年以上も常に殺し合い戦い続けているなんて、DNAから好戦的で攻撃的な生き物なんだろうなぁ」と思っていた今日この頃。
この映画でも、ヒトという生き物がもつ「理性」や「論理的に思考できる力」や「温かな愛情や思いやり」というような〝正の側面〟が、同じヒトという生き物がもつ「原始的な不安や恐怖、強い怒り等の情動にあらがえない性質」「攻撃性や好戦性」「社会性の暴走」などの〝負の側面〟にあっさりと押し流されてしまうという、ヒトの歴史の原理を上手く表現しているな、と感じました。
記者が事件を客観的な事実として書き残そうとしているのが唯一の希望なのかな。
最後はどうまとめるのかな、と期待しつつ観ましたが、結局、逮捕された村人は恩赦で釈放され、被害者側は以後事件を語らないという史実のみが語られ(それはそれで事実としての重みがあって良いんですが)、ヒトという種の〝救いのなさ〟みたいなものが、ポツンと心に残りました。