「関東大震災から100年、加害者も被害者も傍観者も子孫や遺族に取り返しのつかない傷を残した狂気の沙汰。」福田村事件 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
関東大震災から100年、加害者も被害者も傍観者も子孫や遺族に取り返しのつかない傷を残した狂気の沙汰。
関東大震災朝鮮人虐殺事件は、その当時にも非難の報道をした新聞が一部にあり、現在も地域によっては犠牲者の慰霊が行われたりしているようだが、永年の間“知る人のみぞ知る”事件だった。震災100年目の今年に向けて、テレビ、新聞、ネット記事などでとりあげられるようになり、少し知ることができている。
多くの朝鮮人や間違えられた中国人が犠牲になり、共産主義者もリンチにあった騒動の陰で、千葉県の福田村で起きた事件は、さらに闇の奥に封印されてきたようだ。
森達也監督初の劇映画だという。
かなり取材をされたようなので、なぜドキュメンタリーではなく劇映画にしたのか疑問に思ったのだが、それは観れば解る❗
これは、いわゆる再現ドラマではない。架空の人物で実際の事件をなぞったからこそ、犠牲となる行商集団の棟梁(永山瑛太)に「朝鮮人なら殺してもええんか!」と叫ばせることができたのだ。
この映画は、朝鮮人に間違えられた日本人が殺された…というセンセーショナルな事件を題材にしながら、朝鮮人虐殺事件そのものに照明を当てている。
当時の人たちの常識の非常識さが滑稽なほど顕になっていて、人間の本性とか行動原理とかを炙り出している。これがフィクションの効果だ。
我々観客は、その非常識な常識がどんな情報によって生成されたのか、その元凶が何だったのかを想像し、それが招いた事態に戦慄する。
千葉日日新聞社で、犯罪者は一律「不逞の鮮人」だと報じておけば良いという風潮が説明される。上司(ピエール瀧)と若い女性記者(木滝麻生)との会話だ。
木滝演じる記者は誤った報道が人心を惑わせるのだと、この事件に接してあらためて痛感する。ピエールはそんな事は知っていながら、この時代で新聞屋が生き残る道を歩んでいたのだ。
市井の人たちが「日本人は朝鮮人をいじめてきたから、朝鮮人の仕返しが怖い」といった会話をしていたりする。
折しも、日本統治下の朝鮮半島で朝鮮独立運動が活発化し、武力鎮圧によって大勢の朝鮮人が虐殺された。これを正当化するため朝鮮人は賊徒であるかのような報道がなされ、人々はそれを信じていた。
森達也監督が100年前の日本の恥部をさらけ出したのは、世界に向けてというより日本人に対して、ほんの3〜4世代前の祖先がこのような愚かで怖ろしい行いをしたことに目を背けるな…と、突きつけたかったからかもしれない。
そして、お前は何がおかしいと思うかと、問いかけられている気がする。
なぜなら、そこに絶対的な悪人は存在せず、人に疑問すら持たせなくする擦り込まれた先入観や、人から判断力を竜巻のように剥ぎ取っていく集団心理/群集心理の様子が描かれていて、元凶は画面に出てこないからだ。
本当の悪は何だったのか、この映画の中だけではなく、軍国主義日本帝国の歴史に、あるいは戦後から今現在までの日本人の中にも、どこかに本当の悪が隠れているのだと言っているのかもしれない。
井浦新演じる失意の元教師が朝鮮半島の赴任地で体験したとする事件は、朝鮮独立運動の中で起きた一つの事件にすぎない。同じような体験をした日本人は大勢いただろうが、彼のように自責の念に苛まれた者ばかりではなかっただろう。何を常識ととらえるかによって、人の判断は大きく隔たるのだから。
朝鮮側でさえ、独立運動に参加しない若者に対して主導者から暴力的な脅迫があったとも言われている。
この映画が見せる人間とは、群衆とは、そして国家とは…我々は何を見てどこに行くべきなのだろうか…。
こんばんは♪
大変お忙しいところ、詳しいコメントをいただきましてありがとうございました😊
福田村以外に、朝鮮人、中国人?、社会主義者、を殺した事件も多発していて、
朝鮮人を殺した者は、不起訴、しかし、
日本人を殺した本事件ではそういうわけにもいかず、自警団を逮捕起訴したが、他の事件を鑑みて本事件だけ罰するのは⁉️という裁判所の忖度みたいなものがあり、昭和天皇即位に乗じての恩赦で無罪、ということですね。
殺された人は殺され損ですね。
本作のように世に知らしめられないと浮かばれませんね。よくわかりました。
ありがとうございました😊
加害者が被害者、と言うのは、誤情報で自分たちを守る為に殺さなければいけないと思わされ、犯行に至ったからということですね。後になって我に返り、後悔されたでしようか。
「朝鮮人だったら、殺してもいいのか?」駄目に決まっています❗️
実際にはとても言えてはいないと。
話の流れでは、挑発的な役割に思えてしまいました。しかし、おっしゃるように監督並びに本作を作ろうと立ち上がった方々皆さんの思いであったと思います。
貴重なコメントをいただきましてありがとうございました😊
また今後ともよろしくお願いいたします🤲
おはようございます😃
超真面目なKazzさん、
共感コメントしていただきましてありがとうございました😊
まず、一つ一つ質問ですが、コメントにもありました恩赦ですが、なぜ殺人罪という重い刑罰を恩赦で無罪にした、とお考えになられますか❓
そうですね。
この映画を観に行かれた方が思いの外多い事。
(比較的ニッチ層狙いの印象でしたが劇場シートが8〜9割埋まっていて驚きました。)
レビュー拝見しても、現在の日本について考えようとなさる人々の多い事。
「日本も、まだもう暫くは大丈夫かもしれないな」
と思わせて頂く事が出来ました。
薄氷の上にあるかのような「平和」ですが、願うべくは少しでも長くありますことを!
失礼します
とても真っ直ぐで衒いのない、眩しい位のストレートな貴殿のレビュー、大変感銘を受けました
未だ、論点ずらしや、セクシャルな場面が多い事への嫌悪感と今作のテーマとの恣意的な結びつけによる、露悪性に偏った感想が少なからずの中、きちんと切り分けというか、シナリオと監督の微妙なすれ違いを認識出来ていれば、今作は正確に批評出来るのだろうと感じております
生意気な返信、大変失礼しました
いつもコメントありがとうございます〜♪
いやぁ実は「自分でとことん〜」の一文は、いぱねまさんのレビューに感銘と強い共感を抱いてのことなんですよ。
流石kazzさん。
まさに「観ればわかる!」なのですが、どーも観てもおわかりにならない方々がご自身の理解の範囲内であれやこれや作品や監督にモノ申されているレビューも少なくないようでして。
でもkazzさんは偉いです〜。私もいぱねまさんも諦念・諦観に寄った文章ですものね。kazzさんは真正面から書いていらして頭が下がります。
私は90年代の約10年間。人権問題に真正面から取り組んでいた時期がありまして・・・(在日、部落、身障の三大差別について全国巡って随分と学ばせて頂きました。)
10年、熱く活動したことでかえって深い諦念に落ち込んでいる部分もありますが。
でも学び続ける事と行動を起こす事だけは忘れずにいたいと思います。
どちらかが一方的に正義で、どちらかが悪と思い込むと、見えるものも見えなくなりますね。
ネットが発達しても、決起は善悪を決めるのはマスコミで、その記事を盲目的に信じ込むのは、今も昔も変わりません。
ウが正義、ロが悪、その通りかもしれませんが、どちらも指導者が平然と嘘をつきながら戦争をしているのは事情です。ロの立場のマスコミがいないと、、、今も昔も変わりませんね。
今日観たパリタクシーのロード・ムービーもフランスらしいパリジェンヌを思わせる生き方、夜景やエンドロールのダンスまで心地良く見ることが出来たストーリーでした。また、共感作で話せればと思います★
コメントくださり思い出しました☆関東大震災の日に観た映画でした。残暑のせいかすっかり忘れてましたが、永山瑛太さんが薬売りかどうか、身元を確認する前に斧を振りかざす残虐なやり方だったと思います。
イイねコメントありがとうございました😊。知らないは通用しないですね。確かに。いくら外国の人への偏見差別あるとはいえ、個人的な憎悪恨みがない人 面識のない丸腰の人 をいきなりあやめるのは 鬼畜 と同じ
狂人と思います。ただ、立場的には貴殿のおっしゃるのと同じ中途半端だったカモです。
共感ありがとうございます。
どんな考えでも考えに考え抜けばいいと思います。しかし、考えあぐねて最後の拠り所が暴力という結論に至った時、それは明らかに間違いだったのだと思います。