「徐々に水がたまり、一気にあふれる展開に息を呑む」福田村事件 ひでぼーさんの映画レビュー(感想・評価)
徐々に水がたまり、一気にあふれる展開に息を呑む
実在の事件を題材にした物語。
重いテーマであるにも関わらず、連日満席となっており、森監督の注目の高さがうかがえる。
事件に至るまでの背景と事件そのものが丁寧に描かれている。コップの水があふれるように徐々に強まる不穏な空気に終始目がはなせなかった。
事件の悲惨さと過去の日本の過ちへの批判は痛いほど伝わってくる。
なかば過激派のメッセージがストレートすぎる場面もあるが、登場人物全体としては苦悩するもの、翻弄されるものなど、グラデーションを持って描かれており、バランスはとれている。
現代社会も似たようなものである。
豪華な俳優陣が、いい味を出している。
井浦新は静かだが思いと過去に一癖ある役はそのままである。
田中麗奈は久々みたが、品の良さの一方で、奔放だが芯があり憎めない役でぴったりであった。その2人の相性がとてもよい。
脇役含めてみなすんなり入ってきた。
永山瑛太は演技は良かったけど、田舎出にしては顔が整いすぎたかな。キャスティングというのは難しいものである。
惜しいところは、お金がそこまで潤沢になかったのだろうが、セットや撮影場所、衣装がチープなところがあり、時代が現代で撮影しているのをなんとなく感じてしまい、現実に引き戻される場面があった。
総じてテーマ性、作品として考えさせられ、見るべき映画と感じる。
2023年劇場鑑賞87本目
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