劇場公開日 2022年10月21日

  • 予告編を見る

「やってる事は超絶エグいのに」ヴィーガンズ・ハム ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5やってる事は超絶エグいのに

2024年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

なんでやろ、胸糞悪くならないな。

小さな肉屋を営むヴァンサンとソフィーはお店の経営危機に加えて二人の夫婦関係も危機の真っただ中。そんな時にマスクを被ったヴィーガンに店を襲われ、一人のヴィーガンと揉み合いになり被っていたマスクが取れて顔が見えたが、振り切られて逃げられてしまう。

同じ肉屋の友人宅に行っても、経営の規模の違いやら収入で散々マウントを取られる始末でもう帰りの車内の雰囲気は最悪。すると、帰りの田舎道である自転車を追い越したところで、ヴァンサンが車を停める。
あれ、うちの店を襲ったヤツだ。顔を覚えている。

すかさず車をバックで進めると、ガコンガコン!と激しい衝撃。
ヴィーガン野郎を轢いてしまった。しかも即死。

自首する、放置する、いろいろな思いが巡る中で、ソフィーが普段よく観る犯罪者の手口を紹介する番組で、バラバラ殺人が紹介されていたことを思い出し提案。ヴァンサンは気が進まないながらも自宅の解体場で人肉の解体を始める。

気持ちの悪さであまりよく寝付けなかったヴァンサンは翌朝寝坊し、遅れて店に行くとお客が今朝買ったハムが美味しかったからまた欲しい、と店に来ていた。ヴァンサンはハムを用意した覚えがない。もしや…それは、前日に解体した肉の一部だった。

インドはベジタリアンが多いって以前も何かのレビューで書いたけど、その関係もあってヴィーガンもまぁまぁいる。ただ欧米の典型的ヴィーガンのような刺々しさはなく、彼らの宗教観に基づいた主義なのでこちらもあまり気にしない。

だけど、なんであんなに欧米のヴィーガンは攻撃的なのかイマイチよう分からん。それは恐らく全世界ある程度みんな近い認識だから、この映画のコンセプトが成り立つんだろうな。典型例は娘の彼氏くん。早くショットガンで頭撃ち抜かれてくれへんかなと思うぐらいの、とにかくメンドクサイ理屈を並べまくる。いや、僕いいですって言うだけでええのに、なんでわざわざ不愉快になるような言い草なんかなと思ってしまう。

そんなヴィーガンが逆に肉として消費され、しかもそれが行列ができるほど美味しいという皮肉。彼らは草食動物だ、みたいなくだりは悪ノリだなーと思いつつ、不謹慎にも笑ってしまう。中盤以降は完全に単なる猟のヴィーガンバージョンと化していく。

また、経営が傾いていた時にはギクシャクしていた夫婦関係も飛ぶように売れる”イラン豚”のお陰でどんどん良くなっていく分かりやすさ。結局金の切れ目が縁の切れ目なんだなと。

強めの皮肉、倫理観と欲望の綱引き、主義主張の異なるものというだけでなく、普通に生業としていることが完全に攻撃対象となる理不尽、夫婦の関係の危うさなどなど、切実且つどうにもならない閉塞感モリモリのはずなのに、ポップな音楽と明るい日差しの中であっけらかんと進んでいく感じもあるので、やっている事の割には軽いノリで観ることができるかな。

星四つでもええかなーと思ったけど、そこまで何かが残ったわけでもないのでマイナス0.5。
ブラックコメディの佳作ですね。

ハルクマール
MARさんのコメント
2024年2月6日

コメントありがとうございます!

面白いブラックコメディでしたね。成程、ストレスを与えないためにサクサクと仕留めていったわけですね。

いずれにせよ怖いです(笑)

MAR