「騒がしく呪わしい時代や社会に立ち向かった青春の話」アムステルダム Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
騒がしく呪わしい時代や社会に立ち向かった青春の話
第一次世界大戦後の世界で始まって、ひとまず落着をみたこの物語の後に、まだ第二次世界大戦が起こるのだと気づいた時の胸騒ぎ感が良かったです。まぁ、歴史の辿った道通りな訳ですが。
私たちは結局、巻き込まれながら生きている。世界の重みの下で、潰されまいとあがく人の生をテーマにしたと言うより、「僕ら3人が組めば、解けない問題はない」みたいな勢いで、ニューヨークの暗部に切り込んでいった話。
◉さて、三人組の青春
筋書きの骨格は、社会や政治、経済を牛耳ろうと暗躍する五人委員会の正体を、医師バート・弁護士ハロルド・看護師ヴァレリーが追い詰める。
言わば三対五の物語だが、そのクライムサスペンスに、およそサスペンスらしくない歌や絵画・写真などの芸術、自由や平和が絡んでくる。2組の恋まで生まれて、そちらがむしろ本題であるように、青春讃歌が花開いた。アムステルダムの街路に、歌の花が咲いたようにだ。
◉そして、顔、顔、
バートに顔の皮膚を縫合してもらった傷病兵、ヴァレリーが描くモダンアートの人物像、義眼が右往左往するバートの顔。皆、強烈かつ熱っぽい存在感に満ちていた。激しく揺れる世界の中で、ここにいる、これからも生きていくと、エキセントリックに叫び続けているように感じました。
義眼が転がっても、思考を止めないバートの顔は可笑しくもあり、怖くもあり。
アニャ・テイラー=ジョイのファニーフェイスも蠱惑的だったし、ゾーイ・サルダナの慎ましやかな恋心を見せる表情も良かったですが、とにかくマーゴット・ロビーが綺麗でした。
ハーレクインの時は常軌を逸した世界で煌めいていたし、今回のヴァレリーは常軌と非常軌のギリの境で、男たちを艶然と誘っていた。クスリによって壊された後も、その微笑みだけは残っていましたね。
◉ところで、サスペンスのはずが…
しかし観終わって、クライムサスペンスと青春ストーリーと、ノスタルジックな歴史の文脈から芸術、豪華すぎる俳優陣までが入り乱れて、いや私的には、香り高い飽和状態を愉しんだりもしていたのですが、やっぱり少々、混み過ぎだったかなと思いました。
結局、サスペンスの緊迫はなかった。五人委員会の首脳部の実体は見えなかったし、解剖シーンと道路に突き飛ばすシーンで見せたエグい感じが、その後は登場しなかった。
この作品に「ありえないけど、ほぼ事実」のキャッチを付けるならば、荒唐無稽を荒唐無稽と思わせない展開も乗せてくれたら……いや、更に話がカオスになったのでしょうね。
コメントありがとうございます。貴殿のキメの細かいレビュー大変勉強になります。おっしゃるとおり複雑な構造は相違ないので、パンフ無いのは不可思議でした。😊😊
Uさんさん、コメントありがとうございます(^o^)
テイラー・スウィフトは残念でしたけど、やっぱりマーゴット・ロビーを楽しむ映画だったんでしょうね~もっとまとまったストーリーなら尚良かったです…