「戦争の足音」アムステルダム U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
戦争の足音
コメディかと思って行ったんだけど、案外シリアスだった。…なのだが、こんな展開が待っているとは。何気にワザアリな脚本だった。
知人の死から物語は始まる。
元軍人で将軍という役職の人だ。彼の死に不審な点があるから解剖してほしいと。
それが、終わってみたら第二次世界大戦を遅らせた人達の物語になってた。
ナチスとヒットラーの単語が出た時にたまげる。
中盤くらいから、妙な組織は出てくるわ、大富豪は絡んでくるわ、話がデカくなっていって訳もわからなくもなるのだが、最後にゃカチッと収まるあたり流石というべきか。
結構シリアスって書いたのは、シリアスにも充分成りうるネタではあって、それなりの描写も用意されてる。将軍の娘が殺害されるトコなんざ衝撃だった。
なのだが、エピソードの取捨選択もあるのだろうが、やはりクリチャン・ベールが曲者だった。
終始ヌボーってしてる彼のおかげで、全くシリアス路線にならない。今にして思えば、ずっと誤魔化されてたというか、術中にハマってたというか…だから、独裁者の名前が出た時の落差は大きかった。クリチャンは目薬のおかげで更にヌボーってしてたのだけど。
だけど、見てしまう。彼を追ってしまう。稀有な魅力を持つ俳優なのである。
それにしても、当時は戦争の足音が市井のすぐそばまで聞こえてきてたのだな。数奇な人生とはいえ、町医者と弁護士が、戦争を遅延させる道筋があったなんて驚きだ。犬も歩けば棒に当たるどころの騒ぎではない。浸透していく思想ってのは、どんな思想であれ疫病みたいなもんだとつくづく思う。
話は逸れるが劇中に「民主主義の崩壊」なんて言葉が出てくる。そんな台詞を聞きながら日本の民主主義は崩壊してるけどね、なんて事を思う俺がいる。
民主主義の体はしているけれど、民意が反映される余地はなく、選挙となると組織票が大半を占める。結果、一部の国民の為の民主主義が出来上がる。
税率は上がるは税金の項目まで増える。
年金受給の年齢は上がるは、額は減らされるわ。
物価は上がり続けるのに、給料は上がらないわ。
新卒の初任給が20万未満なんて、何十年前と全く変わってない。国を運営していく為の犠牲を強いられっぱなしなのである。
円安は止まるとこを知らないし。
何十年と一党が独裁してる国家は独裁国家と何が違うのだろうか?賃金は安いは、滅私奉公には長けてるは、協調性を重んじるはで、このままいけば、世界の奴隷にまっしぐらだ。
民主主義どころか、国家の崩壊の一歩手前くらいまできてんじゃないか?
クリスチャン・ベールとデ・ニーロのツーショットはご褒美だった。何はなくとも何かありそうな期待感にゾクリとする。