「これぞSF」パラレル 多次元世界 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
これぞSF
SF作品は欧米が好む世界観だが日本では多くはない。SFに分類されただけでハナから見る価値がないと思われているのだろうか?
以前岡田斗司夫さんのユーチューブで見た記憶があるが、日本人に決定的に欠けているのがこのSFの世界観を構築していく想像力だそうだ。
昨今日本でもアメリカなどを真似て、大手通信会社などが近未来的構想をプレゼンしているが、新しい商品やサービスを提供すれば社会がどのように変わっていくのかという細部に関するプレゼンはなされず、そのプレゼンの感覚的な部分を聞いた人々が勝手に想像するように締めくくる。それによって「私は」どうなるのか? という問いに正面から答えていないのだ。
自分たちの手掛けたものが、どのように社会に受け入れられて、どのように変化していくのか?
この点において、日本企業の想像力の欠如は否めない。だからつまらないプレゼンに終始する。聞いていてわかったような、わからないような…
この映画のように、自殺した父との確執をもった過去、とうに諦めた夢、仕事上の失敗… こんな日常的に起きている人間臭いことが、パラレルワールドにつながる鏡によってどのように解決し、そして度を越して、結果どうなるのか? 人間らしい面を全面的に出しながらこの瞬間を生き抜こうとする若者たちの姿にとても共感する。
そして、どうしても、どうしてもやっぱりそうするのか? と言いたくなるのが最後の破壊だ。
「これは人類にとっての悪よ」
この発想、この発想は不要のようで… 等身大だ。
そしてやっぱりオチが入る。
鏡は、死ぬまでつきまとう。この最後の表現こそが人間にとっての「エゴ」の象徴なのかもしれない。
そこまで感じさせてくれる素晴らしい作品だった。