ソウル・オブ・ワイン : 特集
1本数百万円の最高級ワイン、ロマネ=コンティができるまで 貴重な舞台裏を公開!
話題の映画を月会費なしで自宅でいち早く鑑賞できるVODサービス「シネマ映画.com」。10月28日から3日間限定で「ソウル・オブ・ワイン」が劇場公開前プレミア上映が開催されます。
ワイン愛好家の聖地として知られるフランスのブルゴーニュ地方を舞台に、ロマネ=コンティなど、世界最高峰のワイン造りに魂を注ぐ人々の姿をとらえたドキュメンタリーを、映画.comのお酒好きスタッフがいち早く鑑賞し、その見どころを語り合いました。
シネマ映画.comで今すぐ見るソウル・オブ・ワイン (2019年製作/102分/G/フランス マリー=アンジュ・ゴルバネフスキー監督)
<あらすじ>高級ワインの代名詞であるロマネ=コンティをはじめ、ジュヴレ・シャンベルタン、シャンボール・ミュジニー、ムルソー、ヴォルネイなど、世界中の人々を魅了し続けるブルゴーニュワイン。マリー=アンジュ・ゴルバネフスキー監督がワイン畑と人間の何世紀にもわたる関係にスポットを当て、世代を越えてワイン畑を守り続けてきた生産者たちの貴重な舞台裏を、四季を通して記録。最高級ワインが生まれるプロセスと、偉大なワインを追い求めて受け継がれる技と知恵を、ブルゴーニュ地方の美しい自然と共に詩的で芸術的な映像で描き出す。
座談会参加メンバー
駒井尚文(映画.com編集長)、和田隆、蛯谷朋実、ドーナッツかじり、今田カミーユ
■観ると美味しいワインが飲みたくなるドキュメント和田 ワインが飲みたくなって仕方がないドキュメンタリーでしたが、皆さん、いかがでしたか?
蛯谷 ソムリエの方がすごく嬉しそうに語るので本当においしそうに見えるんですよね。
駒井編集長 確かに! ワイングラスをくるくる回しながら、ワインが飲みたくなる映画でしたね。シャトーの人が味見してるときの「美味すぎて、ワインを吐きたくない」って言葉が最高でした。「それ、オレも飲みたい!」ってなる。
ドーナッツ ワインの醸造過程の全てを丁寧に見せてくれているので、こんなに手間がかかっていることを知ると、今後ワインを飲む姿勢も変わってくるな……と思いました(笑)。
■繊細なワイン造りの過程や、ソムリエの方々の言葉に感性を刺激される今田 繊細なワイン造りの過程の説明や、ソムリエの方々の比喩表現など、鑑賞中は実際に飲まずとも、脳でその豊かさを味わえるドキュメントだなあと思いました。お酒を飲まない方も楽しめる映画です。
蛯谷 同じワインでも時間の年月で変わるというのも、聞いたことはありますが、実際に飲み比べたことがないので、ぜひ体験したいと思うんですよね。見てる時も見終わってからもワインのことばっかり考えてしまいます(笑)
ドーナッツ 皆さんのおっしゃる通り、製造者やソムリエの方々の語彙力がすごいですよね。話を聞いていると、小説を読んでいるような気分になりました。
駒井編集長 ロマネ=コンティをスミレに例えてましたね。スミレの匂いってどんなだか分からないので、共感するのが難しい。
今田 作り手たちや受け取る側がワインを大事にする姿勢や、最後にボードレールの詩を紹介したり、フランスではワインが文化の一部になっていますね。
駒井編集長 プルーストも出てきた。相当なインテリじゃないと、ワインの神髄には到達できないんだなあと。あと、色々なものの匂いを知らないと表現できないというハードルの高さ。
蛯谷 彼らの語彙力や花のにおいなど、ワインを楽しむために自分の感性も豊かにしたいなと思いました。
今田 ソムリエたちは「美味しい」というストレートな言葉は使っていませんでしたよね。
■映像レベルの高さ、ブルゴーニュ地方の美しい景色にも注目駒井編集長 出てくるワインも相当に凄いんですが、映像もなかなか凄かった。フランス人の作るドキュメンタリーは、アートのレベルが違いますね。「ベルベット・クイーン ユキヒョウを探して」でも思ったけど。
和田 ブルゴーニュ地方の美しい自然と共に詩的で芸術的な映像も良かったです。
駒井編集長 ワイナリーの大地の構図も素晴らしいが、室内インタビューの構図も素晴らしい。テーブルの上にあるもの、話者の座る位置とか、背景とか、細かくしっかり計算されています。
蛯谷 ワインの醸造所自体も歴史と風格を感じてただそこにいるだけで絵になる姿が素敵でした。
ドーナッツ 四季折々で、ワインの製造過程をじっくりと見て、味わうことができますね。ブルゴーニュ地方の情景が本当に美しかったです。映画を見て、腰を据えて取り組むワインづくりを追いながら、見ている側もゆったりとした時間を過ごすことができました。
■高級ワインの代名詞、ロマネ=コンティが高値である理由に納得駒井編集長 この映画には「ロマネ=コンティができるまで」ってタイトルを提案したいですね。皆さん、ロマネ=コンティいくらするかご存知?
蛯谷 バカ高いということは知ってます(笑)
ドーナッツ 価格は見当がつかないのですが、よく映画やドラマの高級レストランで、ソムリエの方が「こちらがロマネ=コンティでございます……」と言っているので、かなり高級というイメージは刷り込まれています!
和田 解説に、1本数百万円も下らない高級ワインの代名詞であるロマネ=コンティ、とあります!
駒井編集長 こないだ、行きつけの渋谷のワインレストランで、ソムリエの方とこの映画の話をして「ところで、この店にはロマネ=コンティありますか?」って聞いたら「ありますよ。250万円しますけど」だって(笑)
蛯谷 おお! 一生そのワインにたどり着けない気がします……!
駒井編集長 ワイン1本の値段が、下手すりゃ映画1本買い付けるより高いという……。一生に1回、飲めるかどうかですわ。
和田 さすがに世界に流通させるためには自動化(機械化)されている工程もあるのではないかと思いましたが、最初の畑の耕しから樹の剪定、摘み取り(収穫)、醸造、樽づくり、貯蔵に至るまで極力昔ながらのやり方で丹念に造られているんですね。
今田 高級なワインは庶民にはなかなか手が届かないですが、最近なんでも“コスパがいい”ものが浸透してしてしまっている世の中で、こういった多くの時間や手間をかけたものの良さを、2時間ある映画の中で知ることができるだけでも、贅沢な時間だったなあと思いました。
ドーナッツ 映画を見る前までなら、単純に「高っ!」と戦慄していたと思うのですが、ワインづくりの過程を知ると、ちょっと理解できるような気もします。芳醇な香りだけでも、嗅いでみたいですね……。
駒井編集長 まあ、身も蓋もないですが、ワインの金額を聞くと、この映画の凄さがドドーンと上がるわけです。 あと、ジュブレシャンベルタンとか、ムルソーとか、何気にけっこうな高級ワインが登場してます。
蛯谷 ワイン一つにとても多くの人の手がかけられているというのに本当に驚きました。畑を耕すのに今でも馬を使っていましたね。
和田 ラスト近くの日本人ソムリエ、レストランオーナーのお2人の挙動がおかしかった理由がわかりました。
駒井編集長 あの2人の日本人は、映画を締める重要な役割を担ってましたよね。
■ワインの樽、ブドウ畑へのこだわりも映される駒井編集長 この映画は、ワインの映画でありながら、樽に関する映画でもあったかなと。樽の製造、ほぼ手作りでしたね。で、その樽の会社の人もワインの味にうるさい。
ドーナッツ 樽があそこまで重要だと知らなかったので、驚きました。ワインづくりと同様、樽づくりに携わる方も丁寧で、実直で、きびきびと働かれている様子が、見ていて心地良かったです。
今田 ケン・ローチの映画のタイトルにもなっている、ウィスキーの樽での熟成中の蒸発分を「天使の分け前」と呼ぶことは聞いたことありましたが、フランスではワインでもそう呼ぶのが興味深かったです。
駒井編集長 樽から減った分だけ、同じ品種で継ぎ足すって言ってましたね。それにしても、造り手の人が、樽からスポイトでワインを吸い取って味見しているシークエンスがとても印象的です。あれ、やってみたい。
蛯谷 以前、ナパバレーでワイナリーを訪ねた際に、初期に作ったワインが納得いかずに何エーカーもある広大な敷地内すべてのブドウを抜いて土壌から作り直したという話を聞いていたので、今回も畑での作業にはつい見入ってしまいましたし、あの広い土地でほぼ工業機械も使わず、化学肥料にも頼らないというのは本当に感服しました。
駒井編集長 ワイナリー見学は楽しいよね。だけど、あまりの広さにクラクラしますけど。摘んだワインを背中のバケツに放り込んで、いっぱいになったらトラックにぶちまけて……って凄い重労働。
今田 低木で、日本でよく見るブドウ棚と違いますよね。
ドーナッツ ブドウがみずみずしくて、とてもきれいでしたね。高級ワインへと姿を変える前に、あのブドウを味見してみたいです。
蛯谷 途中である程度の高さですべての木を剪定してましたよね。
和田 木の剪定も、摘み取るのも、ぶどうを足でつぶすのも、ワインをスポイトで吸い取るのも、すべての作業に熟練された技術が必要で、どの作業にも美しさを感じました。
駒井編集長 それに加えて、気温とか雨の量とか、気候条件が影響するので非常に繊細な農業ですよね。
■時間をかけて最高峰のワインづくりに挑む人々の姿に胸を打たれる蛯谷 手間を省いたり簡単にすることでは偉大なものができないという思いが、このワインを作るすべての人が共通して持ち、一つ一つの作業をプロフェッショナルにこなすからこそ、ここまで評価されるワインを作り続けられるんですよね。仕事への向き合い方というところでも、心に残る映画でした。
ドーナッツ 私も、ひとつの仕事論として、素晴らしい言葉だなと思いました。人生の歩み方とワインづくりが重なってくる奥深さがありましたね。映画を早送りする……なんていう風潮もありますが、本作は早送りせず、じっくり時間をかけて、見てほしいですね。
今田 ちなみに、フランスでは「ワインと女性は年を経ているのが良い」とか、「良いワインの様な……」といって成熟した女性を誉める言葉があると聞きました。
蛯谷 この映画を見た後に、「良いワインのような…」と褒められたら大いにうれしいですね!
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