「日本の新しい現実」ファミリア 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
日本の新しい現実
日本に暮らす在日ブラジル人たちの現実を描く作品。日本はすでに移民大国であり、地方ではこの映画に描かれるような場所は確実に増えている。もはや、彼らのような存在は日本社会を構成する上で不可欠な存在になっているが、インビジブルな状態に置かれ、差別もある。
本作が貴重なのは、こうした現実を、実際の当事者たちを起用して描いた点だ。主要キャストには演技初挑戦の在日ブラジル人たちが多数参加していて、当事者だから表現できるリアリティを持ち込んでいる。エピソードにも彼らの経験が反映されているようだ。
物語は、彼ら在日ブラジル人たちが巻き込まれるトラブルと、息子夫婦に訪れる悲劇を同時に描く。遠いアルジェリアで難民女性と結婚した主人公の息子は、異国の地でテロに巻き込まれる。国外でも国内でも、日本人は外国人とつながりを持って生きているし、世界に起きている出来事は決して無関係ではない。世界の大きな変化の流れの中に、確実に日本もかかわっているのだと実感させる良作だ。
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