劇場公開日 2023年1月6日

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「この題材を取り上げたのは高評価。要素過多が惜しい」ファミリア 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5この題材を取り上げたのは高評価。要素過多が惜しい

2023年1月30日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

“瀬戸物”で知られる愛知県瀬戸市で代々窯業に従事していた家に生まれ育った脚本家・いながききよたかは、①斜陽化する地場産業、②瀬戸市に隣接する豊田市にある保見団地に出稼ぎで多く住むようになったブラジル人コミュニティーと地域の人々との衝突(高校生だった1990年代によく騒動が起きていたという)、③2013年にアルジェリアの天然ガス精製プラントにアルカイダ系武装勢力が立てこもり日本人を含む職員らを人質にした事件、といった実際の出来事に基づく3つの要素を1本のシナリオに盛り込んだ。

技能実習制度下の搾取的な労働環境から逃げ出したベトナム人女性たちの苦難を描いた藤元明緒監督作「海辺の彼女たち」(2021)、在日クルド人の女子高生とその家族が難民申請を認められず在留資格を失ってしまう川和田恵真監督・嵐莉菜主演作「マイスモールランド」(2022)など、日本で暮らす外国人の生きづらさを題材にした秀作は近年増えてきたが、この「ファミリア」もそうした系譜に連なる。北アフリカの地で外国人が現地の人間から理不尽な暴力を受けるという点で、やはり役所広司が出演した「バベル」(2006)を想起させるが、役所が演じる陶器職人とブラジル人青年マルコスとの関係性は、「グラン・トリノ」(2008)でクリント・イーストウッドが演じた元自動車組立工と隣家のモン族の少年の関係に近い。

俳優たちの演技、成島出監督の演出も決して悪くないのだが、それぞれに根深くて重い題材を3つも盛り込んだことで、各トピックの掘り下げが不十分になり、トピックどうしの有機的な連動性も弱いのが惜しい。団地のブラジル人コミュニティーと周辺住民との関係は、メインストリームのメディアで滅多に扱われない題材であることからも、この要素にもっとフォーカスしたストーリー構成だったらなお良かったのにと思う。

高森 郁哉