「ファンタジーとして興味深い」ファミリア LSさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンタジーとして興味深い
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予告編から、現代日本の地方都市でのブラジル移民たちの葛藤と共生を描く作品かと想像していたら、シリアスなヒューマンドラマに寄せたファンタジーだった。外国映画ならこういう立て付けに抵抗ないが、日本語で日本を舞台にやられると、現実との差異が目について最初は違和感がある。頭を切り替えてからは、(ツッコミもしつつ)話に集中できた。
うまい演者たちに助けられて、喪失と再生というストーリーの核は分かりやすい(役所広司はどういう役でも説得力がある)。マルコスとその家族の生き様にももう少しフォーカスされるとよかった。
個別のエピソードの強引さ(半グレ殺しすぎとか警察無能とか)はそういうものと割り切れたが、息子夫婦の使い捨て感は映画のラストを導き出すためにシナリオの犠牲にされたようで残念だった。
映画はフィクションでも、背景にある外国人移民の社会的包摂の問題、特に初期の日系人コミュニティが世代が変わっても取り残されたままである点が否応なしに想起される。憧れの地だった時代から30年たってもビジョンがないままのこの国のあり様を考えさせられる。
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