劇場公開日 2022年11月11日

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「刺激と繊細を持ち合わせた伝説のギタリスト」ランディ・ローズ regencyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0刺激と繊細を持ち合わせた伝説のギタリスト

2022年10月11日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

単純

知的

ランディ・ローズと聞いて真っ先に「あぁプロレスラーの…」と思ったのは自分だけだろうか。もっともローズの綴りが異なるけど(レスラーの方は“Rose”)。ミュージシャンのランディ・ローズはオジー・オズボーンのバンドで名を馳せたギタリストという認識でしかなかったので、本作は彼の事を知るのにいい機会となった。
内容は、アーカイブと関係者や友人たちの証言をベースに、ランディの生涯をふり返るドキュメンタリーの定石パターン。アーカイブがライブや音声のみで秘蔵的なものは無いので、それを目当てにするファンの人は肩透かしに思うかも。そもそも、膨大なアーカイブを遺す前に亡くなってしまったのでやむを得ない面もあるが。
もっともライブパフォーマンスは、今の目で見ても凄い。彼のテクニックがいまだ称賛されているのも納得。KUWATA BAND在籍時に河内淳一が披露したギターソロも多分彼の模倣なのだろう(違っていたら失礼)。
ミュージシャン、特にロックバンドの軌跡を辿るドキュメンタリーを観ると、つくづくバンド活動って大変だなと思う。実力はあるのにレコード契約が結べずメジャー街道に乗れない葛藤(クワイエット・ライオットが日本でレコードデビューするに至った経緯を元メンバーが喋っているが、なんとも苦笑するしかない)、メンバー間の不和に脱退…ランディもやがて切磋琢磨してきた仲間と別れるわけだが、観ていて思ったのは、彼は伝記映画の題材としても魅力的という事。刺激的なパフォーマンスをする傍ら、クラシックを学んでいたというプライベートも興味深いし、夭折により存在が神格化されているのが大きい。母が経営していた音楽教室で才能を開花させたという点でも、「ミュージシャンは母性によって生まれる」説をまた立証させている。本作に登場する関係者や元メンバーの証言を膨らませたら、1本のドラマとして作劇できそうな気がする。
全身放送禁止のような存在のオジーが、小柄で繊細そうなランディを今でもこよなく愛しているというのも良かった。まさに陰と陽、水と油。人間とは、互いに足りないものを補う生物なのだ。

regency