「システムとの共生」劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE 終焉怪獣さんの映画レビュー(感想・評価)
システムとの共生
シリーズも10年を超えましたが、本作はマンネリを起こすどころか更なる世界観をアップグレードした緻密な内容となっており、鑑賞後はその圧倒的情報量に放心状態となりました。
以下、素晴らしかった点を。
○圧倒的な映画表現
昨今、国内のアニメスタジオのクオリティが軒並みに上がっていますが、Production I.Gも多分に漏れず凄まじいクオリティ。
やはりサイバーパンクの世界観を描かせたら国内随一のスタジオ。
登場する舞台やガジェットの作り込みがハンパない。
○PSYCHO-PASS 3へのミッシングリンクが見事
何故、常守朱が収監されていたのか?
慎導灼の父親が亡くなった真相等、第3期やFIRST INSPECTORへのミッシングリンクが見事に描かれておりスッキリしました。
あのピースブレイカーの残党やビフロストのコングレスマンも登場しており、また第3期を見返したくなります。
○登場人物達の活躍
正にオールスターと呼べる第1期から第3期までのキャラ達が総出演。
SSに登場したキャラも出演しており、シリーズの集大成となる作品なのだと痛感。
また各キャラ達の見せ場も平等で全員が違和感なく自身の与えられた行動をしていました。
○雑賀先生の最期
第3期で姿が見えなかったので久々の登場で嬉しかったのですが、まさかお亡くなりになるなんて...
狡噛さんや朱ちゃんを導き、その深い知識と観察眼で考察する姿が好きでした。
○ドミネーター
やはりPSYCHO-PASSと言えばドミネーター!
終盤にてあのBGMと共に起動した時はテンション爆上がり。
第3期に登場するSG型のドミネーターもしっかり登場。
強襲型ドミネーターも登場し今までエリミネーター止まりでしたが、遂にデストロイ・デコンポーザーを披露。
余りの破壊力に笑いが出ました。
○人間とAIの共生
AIを題材にした作品は大概がAIを駆逐すべき悪性のシステムとして描きます。
しかしPSYCHO-PASSシリーズは、常に公平な視点でシステムを描いてきました。
今作では、いよいよシビュラシステム一極による法律の瓦解直前まで来ています。
現実でもAIが私達の社会に深く入って来てます。
AIが人々の職業を奪うと言われ続けて来ましたが、当時はまだ漠然としか考えてませんでした。
しかしAI生成によるイラスト作成やchatGPTによる文書構築により、我々人間の真価が問われようとしています。
AIによる恩恵と弊害を身近に感じる今だからこそ観るべき作品。
○PROVIDENCEの意味
PSYCHO-PASSならではの神の定義に唸りました。
また今作での砺波の主張が凄く身に染みました。
私は特段、強い政治的思想性は持ち合わせておりません。
活動家でもありません。
しかし昨今の過剰なポリコレに染まる社会に反感を覚えてます。
多様性を押し付けて逆差別が起こっている惨状。
LGBTQ+、フェミニスト、ヴィーガン、環境保護、動物愛護...
多くの思想が世界中で溢れております。
私はそんな活動家・思想家を否定はしません。
しかし一方的な攻撃的論調で来るのが辛い。
だからこそ人間なんかに社会を法律を委ねない方が良いとも思ってしまいます。
感情を持つ人間である以上、私達は客観性やら公平性なんて持てない。
だから砺波の言葉に魅力を感じました。
対して朱ちゃんの「人間とシステムの共生」にも心が揺らいだのも事実。
○狡噛&朱コンビ
もうこの2人が画面に映っているだけで満足。
時折、朱ちゃんが見せる狡噛さんへの想い溢れる表情や仕草が、堪らなく可愛い。
そして圧倒的安心感ある狡噛さんの戦闘力。
第1期のアンサーとも言える朱ちゃんから狡噛さんへの手紙が良い。
ラストの朱ちゃんの決断と慟哭は観ていて痛々しい。
朱ちゃんは常に法を遵守して来た。
法を守る為に法を犯す...
あの涙はこれまでのあらゆるものが込められている。
だからこそFIRST INSPECTORの再会は嬉しい。
SFクリエーターは思想家であり、哲学者であり、預言者でもあると考えてます。
数年先、果ては100年先の未来の人間性を考察してくる
このPROVIDENCEに限らずPSYCHO-PASSシリーズは、AIと共に生きる私達が観るべき作品。
PSYCHO-PASSシリーズは、まだまだ続きます。
そして私達に疑問を投げ掛けて来ます。
これほどの素晴らしい作品に携わり、私達に届けてくれるスタッフ・キャストの皆様に感謝を。