「ちぐはぐ」劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE alphaさんの映画レビュー(感想・評価)
ちぐはぐ
作品全体のクオリティはほどほどと言うか、これまでと違いがあまり感じられない、ある意味ファンの要望には答えるが、新鮮さは感じられない。
物語自体は、サイコパスシリーズのミッシングリンク部分を描く。そのため、新規の観客は対象外。
今回、常守朱は人間による法治に拘る。これまでもその素振りは見せていたとは思うが、理由がいまいち分からない。
口ではシビュラシステムの有用性を認めていると言っているのに、なぜ法を重要視するのか?
そして、やることなすことがちぐはぐだ。
最後の作戦では、銃武装の敵対勢力に対し、ドミネーターしか使わず正当性のある執行を行うことを宣言するが、それも結局は法治ではなくシビュラの判定に委ねているだけである。現に敵基地でシビュラとのアクセスを確保することがメインミッションだ。
しかし、物語最後には局長を式典で殺害し、免罪体質を公のものとして、シビュラでは裁けない犯罪者が存在することを明らかにし法務省解体と法律撤廃に待ったをかける。。。
これを見ても、ちぐはぐだ。
そもそも免罪体質の犯罪者はシビュラに取り込まれて潜在犯の対象を拡張しつづけることで、その欠点を補うことは常守自身がよく知っているはずだ。
そして、やはり影響というか、イノセンスのエッセンスが多過ぎるわりに浅い物語なので(逆にイノセンスは、哲学的で作家性が強すぎて、人気はないが。。。)、比較すると劣化してみえる。。。
たとえば祭りのシーン。
押井守には理由があったが、この作品のあのシーンに理由は感じられない。
この辺りも、好きなものを入れ込んだ挙げ句ちぐはぐに見えてしまう。
この作品を見ていて思ったのは、ドラマチックなエンタメSFかつ壮大な芸術性のある作品を作ろうとして、こねくりまわした結果できたそれっぽい何か。残念だが何物にもならなかった。