「抗わない…他者との間に深い関係性を築かないという彼女の生き様」ちひろさん talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
抗わない…他者との間に深い関係性を築かないという彼女の生き様
「孤独」を盾にしても、人生の荒波に真正面から抗(あらが)わずに生きるという生き様(ざま)ー。
ほんとうに「ざっくり」と言ってしまえば、そういうことになるのでしょうか。
ちひろが、風俗嬢になったのは、どうやら生きていくため(食べるため)だったようです。
反面、彼女がそういう生業(なりわい)を選んだのは、それが他人(客)とは深い関係性を築かなくても済む…というか、自分を守るために敢えて関係性を築かない職業であったことも、大きな理由だったのではないかと思います。
朗らかで、人当たりも悪くなく、否、むしろ笑顔が人懐(なつ)こくて、一見すると人嫌いではなさそうなのだけれども、どこか、最後の最後の部分では、心を開いていない、人を拒んで寄せつけないところがなくはない―。
それ故、弁当屋で働いていても、後に酪農の仕事に就いてからも、その生い立ちを微塵も感じさせないちひろの立ち居振舞いは、ある意味、凄いとも思います。
幼少期のほか、風俗嬢時代は、苦しい、苦しい、更に苦しい毎日を送って来ていたのでしょう。たぶん、おそらく。
それらが彼女にとっては未曾有の苦しみだったが故に、その後の彼女の人生では、すべてが耐えられることになってしまっていたのかも知れません。
これほど「抗わない」生き方を彼女できる理由として、評論子には、それしか思い当たらないのです。
「これ見よがし」に訴えるのではなく、その生きざまを通じて静かに訴えるからこそ、観る者にも伝わる…胸に迫るものがあるのではないでしょうか。
そう思うと、十二分な佳作だったと思います。評論子は。
<映画のことば>
「さすがは元風俗嬢。男の扱いがうまいねえ。」
「ありがとうございます。」
「褒(ほ)めてないから。」