「Turtles would go! タートルズへの愛が詰まりに詰まった、優しすぎるアメコミヒーロー映画🥷🐢✨」ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック! たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
Turtles would go! タートルズへの愛が詰まりに詰まった、優しすぎるアメコミヒーロー映画🥷🐢✨
1984年に出版されて以来、世界中で愛されているアメリカン・コミック「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」。
幾度も映像化されている本作を、設定も新たにアニメ映画化。
人間世界に憧れる15歳の亀ニンジャ、タートルズの4人は、人間たちに受け入れられるためNYで犯罪を繰り返す悪党・スーパーフライを退治し、その動画をネット上にアップしようと考えるのだが…。
スーパーフライの仲間でイボイノシシのミュータント、ビーバップを演じるのは『ライオン・キング』『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のセス・ローゲン。
タートルズの"父親"であるドブネズミのミュータント、スプリンターを演じるのは『ラッシュアワー』シリーズや『ベスト・キッド』の、レジェンド俳優ジャッキー・チェン。
スーパーフライの仲間でヤモリのミュータント、モンド・ゲッコーを演じるのは『ナイト ミュージアム』「MCU」シリーズのポール・ラッド。
スーパーフライの仲間でワニのミュータント、レザーヘッドを演じるのは『スターウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』や『X-MEN』シリーズの、名優ローズ・バーン。
NYで犯罪を繰り返すハエのミュータント、スーパーフライの日本語吹き替えを担当するのは『銀魂』シリーズや『ザ・ファブル』の佐藤二朗。
スーパーフライの仲間でカエルのミュータント、ジンギス・フロッグの日本語吹き替えを担当するのは『僕のヒーローアカデミア』シリーズや『天気の子』の梶裕貴。
俺たちゃニンジャ・タートルズ♪ティーンエイジのニンジャ・タートルズ♪突然この世に現れた 世界一のヒーローッ!🎶…のテーマソングでお馴染み『ミュータント・タートルズ』。
この亀ちゃんたちが日本でも広く知られるようになったのはやはりテレビアニメの影響でしょう。1993〜1995年にかけて放送されていたこのアニメ版が、日本でのイメージを決定づけたように思います。
上の世代や下の世代はどうか知らないけど、このアニメのおかげで今の30代〜40代くらいには『タートルズ』はかなり身近な存在。うちにもタートルズのおもちゃがあったなぁ。腰のベルトからピザを発射できるごキゲンなおもちゃで、見た目もアメリカンな感じで超cool✨あー、あのおもちゃ捨てちゃったのかな…。ごめんよラファエロ😢
日本にも熱烈なファンを持つ『タートルズ』。当然本国アメリカのファンの愛はより深い。
本作でプロデューサー/脚本/出演を務めるセス・ローゲンもそんな亀愛好家の1人。5歳の頃にアニメがスタート、8歳の時に実写映画版が公開されるという、まさにタートルズドンピシャ世代の彼は、タートルズに影響されて空手やヌンチャクを始めたという。
タートルズを愛するセス・ローゲンが陣頭に立って制作されただけあって、本作にはとにかくタートルズへの愛が詰まりまくっている。
社会に居場所がないミュータントたちが、最終的には敵味方関係なくハッピーになるという優しすぎる展開。
普通なら『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011)のように、タートルズ側にもスーパーフライの思想に共感する者が出てきてチーム内で対立するとか、そういうハードな方向に物語が進んで行きそうなものなのだが、スリリングでシリアスな展開をあえて取らずに愛と希望に満ちた御伽噺として映画を着地させている。このタートルズへの愛と優しさに、ついつい頬を涙で濡らしてしまいました…🥲
ヒップホップ・ミュージック、グラフィティ、デタラメなニンジュツなど、ニューヨークのアンダーグラウンドに暮らすミュータントたちの生活や文化は、明らかにアフリカ系移民たちのそれを思い起こさせるように作り込まれている。
赤毛の白人女性というイメージが強いエイプリルが黒人女性として描き直されているのも、本作がブラック・ムービーであることへの示唆に他ならない。
また、波風を立てず存在しないもののように息を潜めて生きているスプリンターはアジア系移民のメタファーとして捉えることが出来そうだ。
本作は可愛くて楽しいヒーロー映画としての側面の裏に、反人種差別に対する強いメッセージが込められている。
なぜ今更『タートルズ』なのかと疑問に思う人もいるかもしれないが、移民の受け入れに対する議論が世界中で巻き起こっている現代、この新しい『タートルズ』は十分鑑賞に値する今我々が観るべき映画である、と断言出来ます。
今回特に冴えているなと思ったのは、「ティーンエイジ」という要素を強く押し出したところ。
日本では「忍者タートルズ」とか「ミュータント・タートルズ」とかいうタイトルで流布しているけど、原題は「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」。そう彼らは10代の若者なんです。
これまでスポイルされがちだった「ティーンエイジ」の部分を今回は殊更に強調。見事な少年物語に昇華させています。
しかも今作で描かれているのは、スポーツマンとか不良とかそういう人種ではなく、スクールカーストの底辺にいるような日陰もの、いわゆる「陰キャ」。
孤独を感じる陰キャたちへ、「大丈夫!だって俺たちもそうだったもん!」というメッセージとエールを送り、彼らを最大限の愛と優しさで包み込む。
セリフで言わせるという野暮なことはせずとも、スクリーンから伝わってくる製作陣の想い。作り手たちが過去の自分を励ますかのような情熱と優しさに共感してしまって、なんかもうとにかく感動してしまった🥹
自分の中にいる少年時代の自分を救う、これぞヒーロー映画を作ること/観ることの醍醐味でしょう!
人種差別やスクールカーストといった悪しき幻想に立ち向かう、我らがミュータント・タートルズ。久々に超ど真ん中のアメコミヒーロー映画を観させてもらった気がする✨
これはもっと大ヒットするべき映画!タートルズ世代は全員これを観ろと言いたい!
とまぁ基本的には全肯定な作品なんだけど、以下はちょっと気になるところ。
というのも本作のアートデザインなんですが、アメコミやグラフィティがそのまま動き出したかのようなアニメーションはやはり『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)の影響下にあるものだと思うんです。
それ自体は悪いことじゃないんだけど、最近この手の作品が増えすぎてきている気がする…。
デヴィッド・フィンチャーや『デッドプール』(2016)の監督ティム・ミラーがプロデュースするNetflixのアニメシリーズ『ラブ、デス&ロボット』(2019〜)や、ディズニーが作ったそれの模造品『Kizazi Moto:ジェネレーション・ファイア fromアフリカ』(2023)なんかにはこれと類似したアートデザインが散見されるし、本作の監督ジェフ・ロウが共同監督/脚本を務めた『ミッチェル家とマシンの反乱』(2021)もこんな感じだった。
始めは「うぉー!すげー!!」なんて思っていたこの手法も、さすがに見飽きてきた感じ。
めちゃくちゃ新しいことをしていたピクサー作品が、他のスタジオにマネされまくった結果今では保守的に見えるというあの感覚が、『スパイダーバース』的アニメーションにも起こり始めている気がしますねぇ…。
まぁあとは優しすぎるが故に物語の刺激に欠けるという点、スーパーフライ一人に悪者役を押し付けすぎじゃないかという点が気になるところではあるが、それは些事にすぎない。
とにかく優しくて愛おしい…。スーパーヒーロー映画の新たな傑作が誕生したと思います♪
そしてそして…。次回作ではついに登場するみたぃねぇサワキちゃーん!🪼
※原語版で観たかったが、仕方なく吹き替え版で鑑賞。だって劇場でやってないんだもん😡
一部芸能人吹き替えということで不安だったが、思ったよりも悪くなかった。…が、やはりプロの声優とは雲泥の差。佐藤二朗はまだ良いとして、レオナルドとエイプリルはなぁ…。というか、なんでタートルズの中でレオナルドだけ芸能人にしちゃったんだろう。一人だけ浮いていて可哀想。
ただ、一番気になったのはスプリンターの声。原語版ではジャッキー・チェンが声をやってんだから、当然日本語吹き替えは石丸博也さんだろぉ〜〜!!
石丸さんも80歳過ぎてるし、もしかして仕事量減らしてんのかな…。そうだとしたら悲しいな…🌀