「僕の好みには合いませんでした」ブラックナイトパレード 福島健太さんの映画レビュー(感想・評価)
僕の好みには合いませんでした
まず映像としては、あまりCGに手をかけていないように見えました。
黒いサンタの袋の怪物とか、ネズミとか、いささかチャチに感じます。
トナカイ試験の腕相撲のときの女の子の変顔とか、笑いを取りにきているらしい部分は多いのですが、僕は笑えませんでした。
(まさかのひとつも笑えないなんて…)
ただ、幼い頃の主人公がおもちゃをラッピングして家の扉を開けると黒いサンタがトナカイを従えて待ち構えている場面は、少し感動しました。
突然何かに巻き込まれて、仲間と一緒に困難に立ち向かうという王道の展開自体は嫌いではないし、忘れていた過去とか、そういうのも僕はわりと好きな方です。
トナカイ試験の受付をしていた指の長い、白い手の正体がネズミの親玉だったのはどういうことなのか、主人公は5年前のいちご大福の件でカイザー君を助けたようだけど、あの写真をSNSに挙げたことでどうやって助けたのか、そもそも映画の最後だって赤いサンタを継ぐことを決めただけで父親の死の真相も何もわかりません。
謎が解決しないままのあのお話では、カイザー君が主人公のために身を危険に晒してまでネズミ達に狙われる囮になるのなんか不自然すぎるとか、登場人物の行動原理とその行動のチグハグな点が薄っぺらく感じられてしまいます。
5年前には既にバイトをしていたカイザー君は、むしろバイトの先輩だと思うのだけど、主人公のことを先輩と呼んでいて先輩後輩も逆転しているし、多分その辺りの人間関係にも色々と映画では描かれなかった部分があることと思いますが、描かれないものはわからない。
特にフィクションである以上描かれないものは無いのと一緒です。
これがもしも映画オリジナル作品だったら、内容の薄さでもっと評価を落とすところでした。
漫画などの原作の映画化は2時間程度の上映時間内に無理矢理お話を詰め込んで駆け足しているのがよくあることなので、漫画の映画化作品については、僕は残ったままの謎やご都合主義をマイナス材料にしないようにしています。
そういった点を「ここが悪い」「あそこも悪い」といっても、原作のファンに残念な思いをさせるので良くないでしょう。
映画化する以上は、原作には人気があるものと思いますので、「きっと原作では謎が解き明かされてみんな納得するいい話になっているんだろうな」と考えています。
そのような配慮で星3つ付けましたが、僕は原作を見ていないから、単純に映画だけを評価するなら、コメディー部分は滑っているし、映像には優れた技術を感じないし、ドラマとしても内容が不十分だと思います。