東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 運命 : インタビュー
北村匠海×山田裕貴×吉沢亮、“役を超えたもの”が作品に宿る瞬間 時代を作った「東京リベンジャーズ」との歩み
北村匠海、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮。若手トップクラスの俳優たちが全身全霊で挑み、最終興行収入45億円、観客動員335万人を記録し、同年の劇場用実写映画で1位となった「東京リベンジャーズ」。そして、前作キャストが再集結する続編「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 運命」「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 決戦」の2部作が、間もなく公開を迎える。前作を「世代を代表する作品」というひとつの到達点へと導き、枯れることのない熱量でシリーズを支え続ける北村、山田、吉沢。「前作を超えた」という自信や新たな挑戦、“役を超えたもの”が作品に宿る瞬間など、「東京リベンジャーズ」との歩みを語ってもらった。(取材・文/編集部、写真/間庭裕基)
「映画 賭ケグルイ」シリーズ、「映像研には手を出すな!」の英勉監督がメガホンをとり、シリーズ累計発行部数7000万部(3月時点)を突破した和久井健氏の人気コミックを映画化する「東京リベンジャーズ」シリーズ。どん底の生活を送るダメフリーター・花垣タケミチ(北村)はある日、かつての恋人・橘ヒナタ(今田)と弟・ナオト(杉野)が事故に巻きこまれ、命を落としたことを知る。翌日、何者かに命を狙われたタケミチが死を覚悟した瞬間、高校時代にタイムリープ。ヒナタを救うため、タケミチは事故の原因があると思われる最凶の不良組織「東京卍曾」(東卍)に潜入する。前作では、過去で東卍の総長・マイキー(吉沢)や副総長・ドラケン(山田)ら大切な仲間たちと出会ったタケミチが、未来を変え、ヒナタを取り戻すさまが描かれた。
続編の中心となるのは、原作の人気エピソード「血のハロウィン編」。新キャストとして、永山絢斗(場地圭介役)、村上虹郎(羽宮一虎役)、高杉真宙(松野千冬役)が参加している。タケミチの目の前で再び、凶悪化した東卍によってヒナタが殺される。彼女を救う鍵は、東卍結成メンバー6人を引き裂く“悲しい事件”にあった。タケミチは再び、ヒナタと仲間を助けるために奮闘する。
前作が大ヒットしたことで、キャスト・スタッフには「前作を越えなければ」という大きなプレッシャーがのしかかったことは、想像に難くない。まずは25歳(インタビュー当時)という若さで、“座長”としてチームを引っ張った北村に、続編で「前作を超えた」という手応えがある部分や、新たに挑戦したことを教えてもらった。
北村「僕はスタッフさんが作る照明やカメラワークなど、1シーン1シーンのこだわりを感じました。これだけ多くの人に1を見てもらえたというプレッシャーを、僕ら含むチーム全体が背負っていたし、感じていた。完成したものを見ても、そのあたりの作り込みが本当にすごくて、改めてそう思いました」
北村「芝居においては、新しい台本でキャラクターたちと対面してみると、各々に取り戻したいものがある。キャスト同士も、互いに受け取るものがあって投げ返していくところが、僕は『東京リベンジャーズ』の在り方だと思っています。皆がひしひしと感じていたプレッシャーや重さというものは感じていましたが、全員が全力で応えていたなと思います」
「血のハロウィン編」は、さまざまな時間軸の出来事が描かれ、それぞれのキャラクターの思惑が複雑に絡み合う。物語としても、ビジュアル面でも、サスペンスフルな印象を受ける。
北村「特に『運命』は、監督とも話していたんですが、完全にミステリーものなんですよ。だから、ことあるごとにサスペンス感や謎解き感があったと思います」
山田は前作で、ドラケンのトレードマークでもある金の辮髪、こめかみの龍の刺青、ピアスなどを完全再現。その徹底した役づくりで、多くの観客を魅了した。続編では、ドラケンの新たな一面が描かれる。
山田「1の方が話としてはシンプルだったので、今作はストーリー面での難しさもあるんですが、皆の力で、本当に前作を超えているんじゃないかなと感じられる前編でした。ドラケンとしては、1の方が勝負する場所があったので、そういった面では立ち位置的な難しさを感じていて、『2は大丈夫かな』という不安もありました。でも、作品を見て、やっぱりそれぞれの役割ってあるんだなとすごく感じました。『(ドラケンの役割として)ここは、こういう落ち着きどころにしようかな』というものが、自然に物語のなかで見えて、『後編はどうなっているのかな、楽しみだな』と思えるところにつながっていました」
吉沢は、小柄で童顔ながら、喧嘩では負けなしで最強、不良たちに「この人についていきたい」と思わせるカリスマ性を秘めたマイキー役を、圧倒的なオーラで表現。困難が多かった前作を振り返りつつ、続編での挑戦に思いを馳せる。
吉沢「前作は撮影が途中で止まったり、僕らとは関係のないところでの圧や困難がありました。公開が遅れて、アニメが先に始まったりもして、追い風がすごかった。いろんな意味で、めちゃくちゃ頑張ったなと思える1だったんです。今回改めて作るときに、あのときの熱量をもう1度再現できるのかと考えましたし、それこそ、それ以上のものを作らなきゃいけないという共通認識が皆にありました。結果、すごく良いものになった気がしますが、そういう意味では、新たな挑戦だったのかなと思います」
前作のインタビューで北村は、「同世代が一堂に会して、僕たちの先輩方と同じ道ではないとは思うけど、大きなバトンをこの作品で繋いでいけたらなという思いです」と、胸中を明かしていた。「世代を代表する作品にする」という気概を、照れることなく、真っ直ぐな言葉で伝えてくれた姿が、強く印象に残っている。続編では、「前作を超えたい」というだけではなく、キャスト・スタッフ全員が「このチームで集まれるのはこれで最後だ」という並々ならぬ思いで、撮影に取り組んでいたという。
北村「1が終わったときに、プロデューサーの方(岡田翔太プロデューサー)とも話したんですが、僕は2をやる義務があると思っていました。お亮も言っていた通り、1はいろいろとスペシャルなことがあって。常に僕ら自身もリベンジするような思いでした」
北村「2は、言ってしまえば皆が冷静に、作品に向き合うことができました。改めて考えると、こんなメンバーが集まれることは奇跡でしかない。普通だったら、続編をやるとなっても、実現するまでに、もう何年かかかるんじゃないかと思っていたんです。でも、皆がイエスと言ってくれたから、このスピード感でここまで辿り着けた。全員が『これで終わりだから、後悔しても取り返せないぞ』という強い心で撮影に臨んでいる感じがしました」
山田「僕は、続編があると思っていなかったので、1のときも『これで最後だ』という思いでした。もちろん、匠海っちの『やりたい』という思いは聞いていましたが、このメンバーで次にいつ集まれるか分からないから、まず1を最後までやろう、と。それで2をやることになった、そうか、ドラケンが違う人になっていたら嫌だな、やろう。また3をやるとしたら、そのときも僕は、ドラケンが違う人になっていたら嫌だな、と思っているんだと思います(笑)」
北村&吉沢(爆笑)
山田「本当に贅沢なことだから。いつまでも続くことは、なかなかないと思うので、全部出し切ることが、いつも目指していたところでした」
吉沢「僕は続編があるんだったら、『マイキーは別の人で……』と思っていました(笑)。でも1のクランクアップのコメントで、『続編があるんだったら、早く言ってくださいね』と軽口をたたいてしまって、言った以上はやらなきゃと(笑)。本当に1のときも、山田くんが言っていたみたいに、これで出し切るというつもりでやっていました。続編をやると聞いたときは、単純に嬉しかったですが、もう1回あの気合いを取り戻せるのかな、皆があの熱量でやってくれるのかな、場地や一虎や千冬は誰が演じるんだろう、いろいろな不安もありました。でも、結果的に素晴らしい役者さんが揃いましたし、皆が『続編をやるなら、相応の覚悟がないと』という思いで現場に来ていると感じたので、安心できたし、より良いものを作ろうという思いになりました」
本作は、切磋琢磨してきた同世代の俳優たちが揃っているとあって、「俳優同士の関係が、役を超えて画面に現れる瞬間」が、大きな見どころのひとつだ。前作のインタビューで岡田プロデューサーは、北村と、タケミチの親友・アッくんを演じた磯村のシーンを、印象的な場面として挙げていた。プライベートでも絆が深いふたりだからこそ、タケミチとアッくんが屋上で対峙する、“変えられなかった現在”の切ない場面は、劇中でも屈指の名シーンとなった。何度もテイクが重ねられたが、ふたりは何十回も涙を流したという。続編でも、キャスト自身が「相手がこの人だから、こういう芝居ができた」と実感する瞬間はあったのだろうか。
北村「僕が実感したのは、裕貴くんとは“現在”のあるシーンで、お亮とは最後のシーンですね。どちらも、このふたりとしか作れないシーンで、自分にとっても大きな存在だったなと思います。裕貴くんとは役を超えて、その場面から離れた対話で、そのシーンを作ったんです。お亮とは、シーンのなかで話し合う、ぶつかり合うという感じでした」
山田「対話してたね~、かっこよかったね」
北村「山田裕貴、吉沢亮、北村匠海、それぞれの役者としての在り方の、かみ合い方の面白さがありましたね」
山田「匠海っちが言っていたシーンは、すごく覚えています。話し合わせてもらって良かったなと、すごく思います」
北村「そのシーン、説明が難しいんですよね。全部を見てきて知っているドラケンと、何も知らないタケミッチが現代で対話する。だから、会話にすごく矛盾が生じるんです」
山田「ドラケンからすると、本来であれば『タケミっち、何で覚えていないんだよ』で終わってしまうシーンなんですよ。『何で覚えていないの?』という衝撃が大きいはず。でも、ドラケンにはストーリーテラー的な役割もあるから、話を進めていかないといけない。そのときの僕のリアクションや表情の大きさは、どれくらいのものなんだろうと。そのシーンはドラケンの思いで邪魔しちゃいけないけど、でも……と、いろんなことを考え過ぎてしまって、悩んだんです。漫画を現実にすることの難しさを感じました。生きている人がやると、それなりの時間がかかるはずのシーンなんです。『何で覚えていないんだよ』という思いが強いから、すらすらセリフをしゃべれなくなるというか」
北村「腹をくくれば、僕らがよく言う説明ゼリフのような、見ている人に分かりやすく説明するシーンなんだけど……」
山田「かといって、ハートをこめずにやるという割り切り方を、この作品ではしたくないなと」
北村「伝えるドラケンとしても、受け取るタケミチとしても、ちゃんと理由や意味がほしかったんです」
山田「台本の回想に入るところを、こう変えたらいいんじゃないかということも話し合いながら、ふたりでシーンを作り上げていきました。亮に関して言えば、互いにライダーや戦隊ものをやっていた時期も、少女漫画原作の作品のライバル役をやっていた時期も同じで、歩みが何となく一緒。要所要所で話して、共感し合えるし、通じ合える仲です。亮がマイキーとして現場にいると、自然と『ドラケンってこういうことなんだろうな』と思える瞬間があるので、互いに重なりが良いなと思います。ふたりとの芝居には、役の関係を超えたものがあるところがいいですね」
オフィシャルインタビューで、「人のお芝居を見ていて『いいな~』『皆すげーな!』と感じることが多かった」と、撮影を振り返っていた山田。その言葉通り、自身が刺激を受けたシーンとして、北村と吉沢のシーンを挙げ、熱弁してくれた。
山田「匠海っちが言っていた、ふたりのあるシーンを現場で見ていて、しびれました。こんな経験は、なかなかないなと。ふたりが空間すら支配しているところを見て、『頑張らなきゃな』とすごく思いました。その気持ちは本当に、皆が体感したと思います。ふたりは段取りから、バチバチに気合が入っていて、『これで(本番を)撮っちゃえばいいじゃん』と思えるくらい、パワーや情熱があった。そんなシーンを見られただけで満足できたくらい、しびれましたね」
吉沢はこれまでに、「もちろん同じ作品を一緒に作っている仲間なんですが、皆でひとつというより、各々が戦っている感じがしました。目の前で芝居している相手より、自分の方がもっといい芝居してやる!みたいな熱量がすごくあったなという感じがした」と明かしている。最高のものを目指しているからこそ、仲間として連帯するだけではなく、互いを超えようとしのぎを削る……そんな熱い現場だったことが伝わってくる。山田の賛辞を嬉しそうに噛みしめつつ、吉沢も、北村とのシーンを述懐する。
吉沢「そのシーンは、久々に爆発したというか、『芝居やってて楽しい!』と思える瞬間でした。タケミチの熱量も受け取りながらキャッチボールができているな、やっぱり芝居って楽しいよなと感じました。この作品は、そういうシーンが多いんですよね。『匠海がタケミチを演じているから』とか、『山田くんがドラケンを演じているから』とか、それぞれの役がちゃんと意味合いを持っているから、その人としか出せない表情が、どのシーンでも出ていると思います」
吉沢「あとは集会で、ただひとりでしゃべっているシーンのことも、覚えています。そのとき、ふとドラケンを見たくなって、ドラケンと目が合っている瞬間があるんです。たぶん、ドラケンが山田くんだから、僕もそういうことをしたんだろうなと。虹郎とぶつかり合うシーンも、相手が全部受け止めてくれる虹郎だと分かっているから、超全力でやっていた。この映画は特に、そういう関係や瞬間の積み重ねだと思います」
「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 運命」は4月21日、「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 決戦」は6月30日に公開。