「私も学校に行かなかったことがあるよ」The Son 息子 ぴさんの映画レビュー(感想・評価)
私も学校に行かなかったことがあるよ
ニコラスが父親からの言葉に答えられずにいるあいだ、あの沈黙のあいだには、本人にとってはすごく切実な、でも親に話すのは難しい、言葉や気持ちが詰まっていたと思う。
私にはあのシーンが最も痛切に感じられた。
全体を通して、私はニコラスに感情移入しながら観た。ニコラスが父親に言われた言葉の中には、自分が言われたのと似ている言葉がいくつかあったし、ニコラスのように沈黙や誤魔化しで対応したことが私にもあった。セラピストの人?の前では、親に問い詰められている時より饒舌に話せていたのも、分かるなあと思いながら観ていた。個人的にだけど、すごく解像度の高い映画だと思った。
(あくまで不登校や落ち込みといった状態の描写に関してのみ言える話。診断名や治療が適切だったかどうかは分からない。)
ニコラスに対して、彼らがどう対応するのが最善だったかは分からないけれど、もう少し顧みるべき行動があったのではないかと思ってしまう。
両親の関係って、その後の子供の精神に影響を及ぼすものだと思うよ。
この映画の最悪の結末を回避する手段としては、登校を強制しないこと、適切な医療機関に繋げること、自傷や自殺願望が認められた時点で銃は隠すこと、などが挙げられるだろうか。でも根本の解決のためには、きっとそれだけでは足りない。もし身近にニコラスのような子供がいたら、面倒くさいって思うかもしれないし、対応するのは大変だと思う。けれど、苦しんでいるということは分かってあげてほしい。
でも、最後のシーンで、ピーターが空想のニコラスに願望を押し付けすぎている所は、ちょっと酷すぎると思った。あのような未来が訪れる可能性があると本気で思っていたのだとしたら、ニコラスに対して理解が無さすぎると思う。観ていてゾッとしてしまった。