「いっそ愛していなければ…」The Son 息子 rkさんの映画レビュー(感想・評価)
いっそ愛していなければ…
子どもは簡単に親を嫌いになれないし、何があっても何をされても、諦められないのだとまた思わされた。決して愛されていないわけではない、それだけにどうしても苦しくて切なかった。
ニコラスの鬱状態のきっかけになった両親の離婚、多忙で家庭を顧みないピーターの父親、そんな親なら世の中に腐るほどいると思う人もいるだろうが、何だってそれが死ぬほど辛い人もいるし、気にしない、気にならない人もいる。
両親の不仲というのは経験したことのない人には決して理解出来ない痛みだと思う。ピーターが家を出て行った後に、母親が毎日悪口ばかりだったのを「半分に引き裂かれるみたいだ。」と言ったニコラスの言葉と表情が重過ぎて辛かった。
片方がもう一方を悪く言うとき、自分は両親の子だから、まるで大好きな人に大好きな自分のもう半分を否定されたようで、心臓が痛くて苦しいのだ。と私は感じた。
ピーターを何も見えていない馬鹿な親だと言ってしまえばそうなのかもしれない。見たいものだけを見て楽観的で自分勝手。でもピーターは、決してなりたくない父親像があって、彼なりに理想の父親であろうと苦心しているようにも見えた。父親も母親もそれが間違えていて、3人で常にすれ違っていることがまた切ないと言うかなんと言うか。
最後に退院して3人で過ごした時間のニコラスに嘘はなかったと思う。両親が揃って笑うだけで彼にとっては夢みたいだっただろう。もうとっくに絶望しているはずなのに、どうしてもどこかで信じそうになるニコラスを見続けるのが苦しかった。彼自身もそれをやめたかったのではないだろうか。
いっそ愛していなければ、愛されていなければと元も子もない事しか考えられないほど救われないラストに、終わってからもしばらく席で呆然とした。
「親だって人間だもんな。」というのび太の名言を思い出してしまった。
自分が親になった時には全然違う視点で観られそうだ。それこそ辛過ぎて無理かもしれないけれど。