「この物語と同じように苦しんでいる家族がいる。」The Son 息子 あささんの映画レビュー(感想・評価)
この物語と同じように苦しんでいる家族がいる。
前情報を入れずに観たので、てっきりハッピーエンドかと思っていた。
さすが「ファーザー」のフロリアン・ゼレール監督らしいシリアル感と、ズシンと重いメッセージが響きます。
大きなテーマとしては急性うつ病を発症した息子とどう向き合うかーー。世界中にこの物語のような家族がいる。声をあげ、助けを求めてほしいというのが、テーマなんだろうけど、その周りにはあらゆる小さな問題が重なっている。
そもそも、父親には既に別の家庭がある。ヒュー・ジャックマン演じるピーターは息子と妻を捨てて、当時の愛人・ベスと結婚し、セオという息子が産まれている。
多感な時期の両親の離婚、父親の再婚が重なったことが問題なのだろうか?
いや、そんなこと言ったら同じような境遇で離婚した家庭の子はどうなの?
ピーターが我を忘れて叫んだ本音も共感できる。
それに、ピーター達が選んだ選択は間違っていなかったと思う。
私が彼の立場なら同じ選択をしていただろう。
選挙戦も諦め、ニコラスに向き合おうとした。
なのに、なのにだ、あまりにも悲しい結末に、苦しくて悔しくて涙が溢れた。
ティーンエイジャー前の子を持つ親にとっては他人事ではないし、男性は自分の父親や息子と重ね合わせるのかもしれない。または、自分の思春期の頃と。
父親をあれほど憎んで、絶対同じことをするものかと思っていたピーターが、結局息子・ニコラスに同じことを言ってしまう。“人生を考えろ”“俺がお前の歳の頃は…”とか。
女親も娘に対して同じようなこと言ってしまうけどなぁ。
で、結局どうすれば良かったんだろうか。
自分の子ども達もいずれ通る思春期…、ほんとに考えさせられる作品で
今回も答えを鑑賞者に委ねてる。
あなたならどうする?って。
悲壮感漂う物語だけど、絵は美しかった。
そして、さすがはヒュー・ジャックマン。いい演技だった。
今晩は
コメント有難うございます。
今作を観ていてキツカッタのは、自身の幼き息子への接し方を思い出したからです。長女が生まれ”子供ってこんなに可愛いんだ!”と思い、首が座ってから家人と公園に屡々出かけていました。
息子が生まれた時も同じく嬉しくって・・。
彼が小学生になった頃に、彼の意志でサッカークラブに入会した時には(私もサッカーをやっていたので)毎週出来るだけ練習会場に送迎していました。けれど、愚かしき私は今作の父親と同じように無自覚なるプレッシャーを息子に掛けていました。どうも、私は目力と”圧”が強いらしく(会社の同僚にも頻繁に言われています。)試合後の息子への視線がキツカッタようです。
で、聡明なる妻から”息子にチックが出ている。もう少し優しく接して上げて・・”と言われ、激しく反省をしたのです。
彼が成人になった時に、”申し訳なかった”と詫びたのですが、彼は笑って”父さんの事は反面教師として、参考にさせてもらうよ”と言われた時には思わず嗚咽してしまったのです。
今作は、家族愛の微妙なる齟齬が齎した悲劇を描いた優れたる作品でしたが、とても心に響いた作品でありました。では。
エブエブが母親だから娘にできることの話なら、これは父親だから息子にできたはずだった話。脳の使い方にクセがある人達の話だから同じ人にしかリスクを感じとれないんですよ。