劇場公開日 2024年3月29日

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「オキシコンチンと製薬会社サックラー家」美と殺戮のすべて 大岸弦さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0オキシコンチンと製薬会社サックラー家

2024年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

興奮

難しい

美と殺戮のすべて
神戸三宮にある映画館 kino cinéma(キノシネマ)神戸国際にて鑑賞2024年4月2日(火)

「殺戮」は「さつりく」と読み多くの人を殺すという意味

全米で50万人が命を落とした「オピオイド危機」。薬害を招いた鎮痛剤「オキシコンチン」を過剰に販売促進したパーデュー社とその所有者たるサックラー家と戦う薬害抗議団体「P.A.I.N.」の活動を追うドキュメンタリー。
1953年生まれの女性写真家ナン・ゴールディンは、親しい友人やアーティストを対象、タブー視されてきたサブカルチャー、アンダーグラウンドカルチャー、エイズ、LGBTQなどを対象とした社会派として活動。

この作品では、幼少期からの人生と経歴、写真家としてのコレクションとその解説が前半、2017年に設立した薬害抗議団体“P.A.I.N. (Prescription Addiction Intervention Now)”の活動記録が後半
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製薬会社は慈善事業のひとつとして、美術館などに膨大な金額の寄付を行っており、ニューヨーク、ロンドン、パリなどでは、「サックラー家」の展示施設が存在し宣伝になっているので、P.A.I.N.はそれを取り除くのが目的のひとつ。
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ストーリー
ナン・ゴールディンは手術後に処方された鎮痛剤「オキシコンチン」によりオピオイド中毒になる。生還した後、

ニューヨークにあるメトロポリタン美術館の「サックラー・ウイング」エリアで、講義デモを行っているシーン。オキシコンチンの容器を投げ、水が張られた池にプカプカたくさん浮かんでいる

当初は草の根だった抗議活動はやがて実を結び、大きなうねりとなって世界中の美術館に波及。サックラー家とパーデュー社は責任を認めざるを得なくなる。
P.A.I.N.の抗議活動はルーブル美術館でも行われ、やがて多くの美術館がサックラー家の寄付を断るようになる。

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変化と影響(パンフレットより)
デビッド・リンデと、パーティシパント社のドキュメンタリー映画製作部門の役員トリッシュ・ウオード=トートレスは、美術館やその施設が、世界に対して責任を負っているという点で一致する。「P.A.I.N.」がオビオイド危機とサックラーの慈善活動の関連性を白日の下に晒すために行った活動について知る中で。彼らはゴールディンと彼女の勇敢さに触発された。
「わたしたちは、サックラーの名を施設から排除する驚くべき活動について認識していましたが、P.A.I.N.の目標は、単にサックラー説明責任を求めるだけでなく、オビオイド危機に対するハームリダクション(薬物の使用を止めさることではなく、薬物使用によるダメージを減らすことを目的とした政策、プログラム、または実践のこと)の取り組みなど、より広範なものだとすぐに気づかされました」とウオード=トートレスは説明する。
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サックラー家はこれまで、全米各州で何千もの民事訴訟を起こされた後に破産を申請し包括的な説明責任を回避することに成功したが、ゴールディンとP.A.I.N.の抗議活動により、アート界における彼らの地位は事実上剝奪された。今や世界中で、なにを行ったかを知っている。我々がアメリカの数十億ドル規模の企業に影響を与えることができたのは、私の誇りであり喜びです」とゴールディンは付け加える。
 今日においてP.A.I.N.は、サックラー家を筆頭とした製薬会社との和解で得た資金を全米のハームリダクションと過剰摂取防止センターに活用するよう主張し続けている。今ところ、VOCAL-NYやHowsing Worksなど、影響を受けたコミュニティと緊密に連携する草の根団体を支援するために募金活動を行っているが、彼らの主な目的は薬物の安全な消費場所を合法化することである。「この危機を脱する唯一の方法は、エビデンスに基づいたハームリダクションに資金を投じ、血を流さずに麻薬戦争と戦う事です。この映画に対する私たちの願いは、依存症の悪いイメージをすこしでも払拭することなんです」とミーガンカプラーは付け加える。

監督・制作 ローラ・ポイトラス

作品の中では、とても美しい音楽が流れていました。

大岸弦