劇場公開日 2023年9月15日

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熊は、いないのレビュー・感想・評価

全38件中、1~20件目を表示

4.5混迷と絶望。

2023年9月30日
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村山章

4.0彼に真の笑顔が再び灯るその日まで

2023年9月29日
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表現や言論の自由が保証されていないイラン。パナヒ監督はこの国で、体制に対して反逆的な活動を行ったかどで禁固刑や映画製作の禁止を言い渡されるも、その後、制約の中で映画作りを続けている。こういった背景を考慮に入れて本作に臨むと、まずもって冒頭のどこか演劇的なワンシーンと、そこから二重三重の境界を超えてパナヒが映画とつながり合う様に、たったそれだけで観ている我々の胸は強く締め付けられる。映画は死なない。パナヒの情熱も全く死んでいない。本作はこの二つの「不死」を裏付ける作品と言えそうだ。だが、かくも制約下で表現し続ける精神を刻みつつも、パナヒはいつしか二組の愛し合う男女が陥った苦しみと直面せざるをえなくなる。立ちはだかる壁を前に、彼が浮かべる表情のやるせなさ。彼に笑顔が戻る日はやってくるのだろうか。我々にできるせめてもの支援は、何よりもまず彼の新作を待ち続けること。そして劇場で鑑賞し続けることだ。

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牛津厚信

4.0虚実の曖昧化と穏和なユーモアを武器に権力と闘い続けるジャファル・パナヒ監督

2023年9月15日
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鑑賞方法:試写会

笑える

悲しい

知的

ジャファル・パナヒ監督は今の世界で最も権力と闘っているメディア表現者の一人と言えるのではないか。イランはイスラム諸国の中でもとりわけ報道や表現に対する規制が厳しく、2023年の世界報道自由度ランキングでは180カ国中最下位の北朝鮮から、中国、ベトナム(これら3カ国は社会主義国家)に次いで低い177位だった。表現者にとっても不自由極まりないイラン国内に留まりつつ、権力側から個人への抑圧や暴力、宗教観にも関わる女性蔑視・差別などを題材に映画を撮り続け、政府から上映禁止、映画制作禁止、逮捕・禁固といったさまざまな圧力と妨害を受けてきたパナヒ監督。不屈の闘士と呼びたくもなるが、この「熊は、いない」を含む近年の監督作に本人役で出演している彼の姿を見ると、大柄で小太りの優しそうなおじさん(オバチャンっぽい雰囲気もある)といった印象で、意外に思う人も多いのではないか。

「人生タクシー」(2015)、「ある女優の不在」(2018)と同様、本作も劇映画の体裁でありながら、パナヒ本人が監督として作中に登場することで、ひょっとしてドキュメンタリー的なパートもあるのではと錯覚させる。ひねりの効いたフェイクドキュメンタリーと見なすことも可能だろう。冒頭のトルコのカフェを舞台にした男女のやり取りの長回しショットから次の“種明かし”のカットへの編集が端的に表すように、虚構と現実を巧みに曖昧化することで、観客がそこからさまざまなメッセージを自分なりに受け止められる豊かさを確保しているではないか。現実を描いているようで、寓話的でもあり、その曖昧なはざまにこそ豊穣さがある、とでも教えられているような。

国境に近い村に滞在するパナヒ監督が、村の若い男女らをめぐる諍いに巻き込まれていくさまは、ユーモラスな雰囲気を漂わせつつ、目に見えない何かにじわじわと手足をからめとられていくような恐ろしさもある。

タイトルになっている「熊は、いない」とは、ある村人からパナヒ監督に告げられる言葉。村人たちが“熊”にどんな存在を重ねているのかも、分かりやすく示される。だが映画をラストまで観ると、本当に“熊”はいないのだろうか、さらにはこの現実世界、日本の社会にも“熊”的な存在はいるだろうか、それとも存在するように思い込まされているだけで実在しないのではないか、などと思い悩んでしまうのだ。

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高森 郁哉

4.5パノプティコン

2024年10月29日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

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レント

3.0確かにいない

2024年9月20日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

怖い

 イランのパナヒ監督は、国外脱出を試みる男女を描いたトルコの映画を撮影していた。彼は海外渡航禁止令を受けているので国境の村に滞在し、リモートでトルコのスタッフ指示を出していた。そんな時、村の男女のトラブルに巻き込まれてしまい。
 上映禁止、逮捕など様々な圧力を受ける監督の、ドキュメントのような作品。監督だけではなく、不自由なトルコの男女、村の習慣に囚われて、それが普通だと思っている村人。窮屈の中の、さらに窮屈な思いに虚しい後味でした。確かに、熊はいない。

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sironabe

3.5本当に 熊は、いない

2024年8月9日
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みる

4.0【”今作における熊とは何か。”今作は、20年間映画製作と海外渡航を禁じられたジャファル・パナヒ監督が、ドキュメンタリータッチでイランの現状を暗喩と皮肉を込めて、命懸けで描いた作品なのである。】

2024年6月7日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

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NOBU

4.0トルコとの国境付近にあるイランの寒村に滞在しているジャファル・パナ...

2024年5月29日
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りゃんひさ

3.5作家としての覚悟を感じる

2023年12月28日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

 イラン政府から国外に出ることを禁じられ、反政府的という理由で収監されたこともある孤高の映画作家ジャファル・パナヒ。彼は様々な抑圧を受けながら、自らを主人公に映画作りを行っている。

 本作は、そんな彼が小さな村に身を潜めてリモートで新作映画の撮影をしている…という所から始まる。
 映画は、この新作映画の撮影風景と、パナヒが滞在する村で起こる事件。この二つをリンクする形で構成されている。

 新作映画の方は、偽造パスポートを使ってフランスへ出国しようとするカップルのドラマである。パナヒ監督はリモートで撮影の支持を出すのだが中々思うようにいかず、最後には思わぬ顛末を迎えてしまう。
 この新作映画は一見すると劇映画のように見えるのだが、実は完全なフィクションではないということが後半から分かってきて面白い。こうした虚実入り混じった作風はパナヒ監督の得意とする所であるが、それがここでも確認できる。
 また、ここには国外に出ることを許されないパナヒ自身の苦悩も垣間見えて興味深かった。

 村の話の方は、古いしきたりに阻まれる若いカップルのドラマである。この村では昔から女性に結婚相手を選ぶ権利は無く、親同士で相手が決められている。若いカップルは、そのしきたりを破って逢瀬を繰り返すのだが、たまたまパナヒ監督がその様子を撮影してしまったことから、彼はこの騒動に巻き込まれてしまう。
 ここから分かってくるのは、女性差別的な風習に対する批判である。パナヒ監督は過去にも「チャドルと生きる」や「ある女優の不在」といった作品で、女性差別の社会に強い批判をしてきたが、ここでもその主張が繰り返されている。

 最終的に新作映画の方も、村の話の方も悲劇的な結末を迎え、何ともやるせない思いにさせられる。しかし、最後にパナヒ監督が”ある決断”を下す所で映画は終わっており、そこに自分はある種の頼もしさを覚えた。
 今目の前で起こっている理不尽な現実から決して目を逸らさないという思い。作品を通してこの現実を世界に伝えるという作家としての使命。そんなパナヒ監督の強い信念が感じられた。

 もう一つ印象に残ったのは、中盤でパナヒが助監督から隣国トルコへの越境を勧められる場面である。ここで彼は国境を超えるかどうか迷うのだが、ここにも彼の強い信念が感じられた。結局国境を越えなかったということは、おそらく彼は今後もイランに留まりながら映画を撮り続けるのだろう。その勇気は感嘆に値する。今後も彼の作品は追い続けていきたいと思った。

 演出はドキュメンタリータッチを基調としており、時折目を見張るような長回しも見られる。特に、虚実を往来するオープニングシーンは正にパナヒ監督の真骨頂という感じがした。

 尚、タイトルの「熊」だが、これは動物の熊に例えた暗喩である。パナヒ監督は村人から「この通りには熊が出るから注意するように」と警告されるが、その意味については色々と解釈できよう。自分は一種の「脅し」と捉えた。
 「脅し」は実際に危害を加えなくても、すると思わせればそれだけで効果的である。つまり、実際に「熊」がいるかどうかは問題ではなく、いると思わせればいいわけである。力の強い者が弱い者を支配する常套句。昨今のモラハラ、パワハラ問題に通じるものを感じた。

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ありの

4.0熊とは…?

2023年12月24日
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熊はいないの熊は
映画をまだ観ていない方からしたら
ネタバレなので割愛
🇮🇷ならではの諸事情かと思いました
パナヒ監督は映画文化を守り続けるために
闘い続けていますが、
まあ今の🇮🇷ってね…😅
色々ありますから制限あって
文化人として自由な活動も許されず
と観たほうが良いかなと😅

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雨雲模様

5.0監督にとって、熊は、権力のあるイラン政府?

2023年12月17日
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鑑賞方法:DVD/BD

知的

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Socialjustice

3.0絶対好きだ好きなはずだしかしぐっすり寝ている

2023年12月9日
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寝られる

自分が分からなくなった。眠たいとにかく眠たかった
国外へ出ることが正しく生きる道でもフランスに行っても本当に幸せになれるのだろうか イラン→トルコ→フランス
イラン人は恰幅が良くて立派大昔この地域はシルクロードの真ん中世界で一番文明が栄えていた所 トルコイランペルシャの今と暮らしへの興味、彼らに対して尊敬の念が芽生えた
密売などであればトルコと自由に行き来できるのだが
個人の幸せを求めて移住するのは許されないようだ
村の掟伝統守られなかったと主張し戦う男 大学を出て彼女を見つけ二人で生きるため国外へ出ようとする男 村にいる男たちはとにかく群れる
世界から取り残されているイランだからこその現代で起きてる問題
国境線を踏んでいる トルコとイラン
彼らの家は中国の田舎のようで砂だらけ土を固めた家に住んでいる

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チャン・パー

3.5「熊」がいるのは外じゃない

2023年11月25日
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かばこ

4.0古い風習

2023年11月4日
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興奮

ストーリーは想像していたものから大きく凌駕するものでは無かったが、イランという閉ざされた国、閉ざされた世界の人々の生活や閉鎖的な暮らしぶり、若者の絶望などが理解でき、大変興味深い映画になっていた。どこまでがガチなのか?今年見るべき一本と思います。

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モロッコガール

3.0潜行パナヒ

2023年10月27日
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鑑賞方法:映画館

劇中劇をトルコで撮ってリモートで指示しているのは、パナヒ監督がイランで映画制作を禁じられているのと、なおかつ出国もできないからだと思うが、実際にはイランの国境付近の村のシーンも撮っているわけで、結構な数のイラン人が監督に加担していることになるが、その辺の事情はどうなのだろうか(似たような事例では収監中に刑務所から指示を送って映画を完成させたトルコのユルマズ・ギュネイがいる)。
イランの映画監督と言えば、独自の切り口で人生の不条理を描くアスガー・ファルハディがいるが、彼には制作上の障壁はないのだろうか。どういう基準でどのあたりまで政府の介入があるのかが知りたいところである。
因襲にとらわれた田舎の人々の無気味な怖さというのは、イランに限ったことではなく、アメリカ映画でも日本映画でもたびたび見てきた。理屈の通じない暗黙の圧力というのは、じわじわ腹わたに効いてくる。昨今のどうにも理不尽なニュースの数々に接していると、地球全体が大きな村のようにも思えてくる。

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梨剥く侍

3.0監督は逃げない!

2023年10月23日
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難しい

馴染みがないイスラム圏の古い社会。

監督本人が描く虚構と現実が行き来する不思議な物語。
映画製作を禁じられ出国禁止を命じられている監督だから、
隣国でスタッフに撮影させて、PCで演技の指示や演出、映像チェックを行う。

古い因習の支配する辺境の村と、
一見普通の都市、愛し合う2組の男女の運命は悲しい。

ドキュメンタリーに見える静かで単調な映像ゆえに、深く考えさせられるものでした。

監督の行動が気になるラスト、
いろんな事を考えさせてくれる難しい作品。

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kinako-cat

3.5いろいろめんどくさい

2023年10月11日
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君は行く先を知らないに続いてまたイラン映画。なんか似たような内容だなと思ったら監督親子だそうで イランの閉鎖的な現状を描く、こちらの方がちと分かり易い
田舎は確かに変わったしきたりが多い、すぐに噂になるし、砂で何処に行ったかバレるなんて良いんだか悪いんだか...映画を撮るのも命懸け、それでも撮り続けるのは映画がやっぱり救いだからかな

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ゆう

3.0解説を読んでからの方がいいかも。

Mさん
2023年10月8日
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(最初から2回以上見るつもりがなければ)まったくの知識なしで見るより、このサイトの紹介や解説(レビューではない)くらいは読んで行った方がよい。

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M

4.0監督も名優

2023年10月7日
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監督の過酷な映画作りの背景を見せてもらえました。
同じ時代に違う場所で生きる事に、複雑な感情を持ちました。
日本も田舎は、沿線上に生きにくい価値観何あるとも思った。

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jiemom

3.5こんな映画の作り方があるんだと感心した。

2023年10月7日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

てっきり素人さんが演じていると思った。パンフレットを見るとれっきとした俳優さんだ。

ドラマ仕立てたが、その製作の裏側を含めドキュメンタリー風にして映画が作られていく。複雑な構造を持った映画。

浮かび上がったのは、イラン人が置かれた閉塞状況だ。トルコ国境近くの貧しい村に蔓延る古い因習。自由がなく経済制裁を受けている宗教国家イラン。

タイトルの熊はいろいろな意味がありそうだ。パンフレットの解説は「脅威」となっていた。私は人間の心を縛る宗教や思想・因習かなと考えた。観る人によって熊はいろいろ解釈されるだろう。良い映画だった。

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いなかびと