劇場公開日 2023年1月27日

「事前情報の有無で良作にも駄作にもなる典型例?」イニシェリン島の精霊 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5事前情報の有無で良作にも駄作にもなる典型例?

2023年2月6日
PCから投稿

今年41本目(合計694本目/今月(2023年2月度)7本目)。

作品自体はPG12ですが、一部に不穏当な描写があるためで(この点、ややR15より)、いわゆる「大人の営み」のシーンはありません。

作品自体は、アイルランド内戦を背景に持っていますが、同時にアイルランド神話(ケルト神話)や一般的なファンタジーの知識(バンシー等)が前提だったり、あるいは、アイルランドの文化(フィドルなど。映画内で演奏されている小型バイオリンは、フィドルです)などを知らないとはまりが生じます。

 ※ 「フィドル」はアイルランドではよくある弦楽器です。youtubeなどで調べると演奏している方の動画など出てきます。

他の方も多く書かれている通り、作品が述べたかったことであろう「アイルランド内戦」に関しては直接の言及はなく、「こんなつまらないことでもめなくても」という人や(内戦そのものへの間接的な批判)、またその内戦が架空の島(この映画の舞台)での「実にどうでもいい争い」になっている点等、もとのアイルランドの歴史や文化等を知っているかどうかで良作にも駄作にもなりうる両極端な映画かな…と思います。

さらに聞き取りづらいのは英語で、アイルランドの英語自体がやはりイギリス英語とも違い独特な単語やアクセント位置があるようで、準1レベルでは聞き取るのも難しいです。そのうえで(前提を知らないと)謎の展開がどんどん続くので、???なまま終わってしまうのではなかろうか…というところです。

ここでは評価はあまりよくないようですが、日本では高校世界史等でもアイルランドの歴史を深く習うことがないだけで、特に西洋では常識扱いされているので、多くの賞に推薦されているなども納得です(直接言及せず、間接的に述べることで内戦の「意味のなさ」について論じているところなど)。

せめて鑑賞当日はアイルランドの文化や歴史などをある程度知っているかどうかでかなり理解が分かれます。この点は他の映画にはない点かな…(2021年の「最後の決闘裁判」なみの知識が要求される)というところです。

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 (減点0.3/日本では理解がやや困難な点は否定もしがたい)

 ・ 結局、上記にも書いたように、高校世界史ではアイルランドの文化や歴史を深く扱わないため、事前に予習しないと謎の展開(しかも、主人公(この映画の主人公を誰に取るかはいろいろあると思いますが、あの喧嘩している2人セットととるのが妥当?)がで出てくる「喧嘩のもめごと」が実に「どうでもいいくだらない話」でしかないので、この点が「内戦に対する間接的な批判なのだ」という点がわからないと、まるで「????」な状況になる点は避けられないかな…と思います。

 ただ、多くの国で賞に推薦されたこともこれまた事実であり、作品としては評価は高いです。
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 (減点なし/他事考慮/映画館の流すCMが謎すぎる)

 ・ 私はtohoシネマズなんばでみたのですが、ここは当然「大阪市」の映画館です。にもかかわらず、「go to travel」の後続版の地域版で「大阪に旅行しませんか?」「笑いも遊びも食べ物も見所もたくさん!」とか「20%の割引があります!」とか出てくるのですが、「大阪市の映画館で」これを放映したところで誰がいくんでしょうか…(制度上、大阪市民が大阪市にこの制度を使って go to travel(地域版)をやることは想定されていない?)?

yukispica