「退屈で何も起こらない美しい島で」イニシェリン島の精霊 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
退屈で何も起こらない美しい島で
小さい島だから皆が皆を知っている。仕事は午前にすべて済んで午後2時にはパブに行ってアイリッシュのビールかウィスキーかシェリーを飲む日々の繰り返し。その島でパードリックとコルムが親友同士であることはだれもが知っている。
人のいいパードリックはコルムにとってかけがえのない友だった。彼とのお喋りは楽しかった。いつまでもそれが続けばいいのにとも思ってた。でもコルムはパードリックより年上でちょっとインテリでパードリックのことを本人以上に知り尽くしている。何もない島、対岸では内戦、いつかは人間は死ぬ、逃れられない。
コルムはこう願ったのか?自分とパードリックの死後も、この島に濃厚で風変わりで熱い友情を結んでいた二人の男が居たことを島の人間やその子孫(そもそも島の男と結婚する女性はいたか?)が覚えていて、ことによったら語り草にしてくれたらいいのに。誰からもいい人と思われて動物にも優しい男、パードリック、そんなんじゃ忘れられる、お前の中の何かを俺が引き出すからな。ドミニクの言った通りだったのかも知れない。それに絶交宣言の後の方が二人の友情の質が高まっている。二人の会話も以前より中身が詰まってきたのではないか?
コリン・ファレルの演技が素晴らしかった。単純でいい奴で素朴で、濃い眉毛を八の字にした困り顔は本当に可愛くて言動も子どもみたいで何度も笑ってしまった。妹が島を離れ、愛するロバのジェニーを失い、パードリックの顔も行動もどんどん変わっていく。それがコルムが見たかったことなのかも知れない。コルム(ブレンダン・グリーソン)は歩く姿も海辺に佇む姿も演奏する姿もすべてが絵になっていた。
おまけ
1)戦争って、なんてことない兄弟喧嘩風に始まって、始まったら最後、なかなか終わらせることができないことをこの映画は言ってるのですか?男の人達はみんな暇そうだったなー。島の女性はパードリックの妹(島で唯一読書する人で島から脱出した唯一の人)と小売店の店主(何か新しいニュースはないかにしか関心がない人)しか居なかった。
2)見てからぐずぐずとああでもないこうでもないと考えて、色んな方のレビューを読んで、そっかー!と納得しながらまた考えて。夢にまで出てくるんですけどー!大迷惑!でもなんだか嬉しい。なんなんだ?この映画!
コメントありがとうございます
映画的比喩での"指切り"だと私は腑に落としています(苦笑 実際、指落とせば痛さは半年以上続くと思うのですが、未経験なモノで(汗
もう生温さに辟易したと切れる人生観に思い立つ事もあるかも知れず、特に今作は演劇由来だから、そのファンタジー性が色濃く影響しているのでしょうね 映画と違って演劇は、観客に想像力を求めることで"共犯性"を担保しないと成り立ちませんから(苦笑
こんにちは。コメントありがとうございます!
6時間・・・それは長いですね。。ランチに始まっても夜ご飯にまで突入しそうな長さですね💦
仰る通り、無理に会うより思い出に残しておく関係も必要かなと思う今日この頃です。
なるほど、これで島では二人の争いが語り種になるでしょうね。
コルムはそこに身体を張りましたか⁉️
私も捻って考えてみましたが、そこには思い至りませんでした。
面白い視点です‼️
地図見たら、Inishで始まる島名が多いなぁと思いまして…。
身体の一部を切断してまで、友を変えてやる!だったら、深い愛情が無ければできないし、いや、それだけ退屈にうんざりしていたのか?!お陰様で一層すごい作品を観たような気になってきました!
つまらない友の魅力を引き出す!その視点はありませんでした。参考になります。ありがとうございます。
あ、Mrs. McCormickも女性にカウントしてあげて下さい😄不気味なお婆ちゃん。
talismanさんへ
コメント、ありがとうございました!
この映画で興味深く思った点を、自分のレビューに追記してみました。コルムがパードリックを、かけがえのない友だと思っていたかどうかは、実に微妙ですw
talismanさん、わたしの拙いレビューに大共感なんてしていただき誠に恐縮です。talismanさんの、“コルムはこう願ったか?…”の処は私が読み取れなかった観点からのレビューで大変参考になりました☺️
コメントありがとうございます!
私は低い評価なのですが、観賞後皆さんのレビューを読んで、納得できました。私はまだまだ修行が必要です(笑)
主役2人の俳優の演技はさすがでしたね!
コメントありがとうございます!
コリン・ファレルほんとよかったですね〜
二人の友情の質の高まり……確かに言われてみれば、そのとおりだと思えてきました。
約束を破った罰にコルムが自分の指を切る、というのも、パードリックがそれによって苦しむだろうという、友情への信頼(歪んでるけど)が根底にあるようにも思えます。
ちょっとシュールな展開だけど、メインのふたりの演技でそこにある感情の動きが本物になっていて、見入ってしまいました。
コメントイイねありがとうございました😭、ドミニク見かけと印象はアレですが、逆にひねくれてなくて、正統派鋭い。それを完全には否定しないコリン・ファレル。弱って迷走するコリン。どっちもどっちで弱っちいキャラで面白かったです。😊