「激しい恋の物語」ボーンズ アンド オール つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
激しい恋の物語
この作品の食人衝動は、本能的な頭で考えるような理屈ではない。そうせざるを得ないといった感じだ。
それは、あるところで恋愛と似ている。
恋せずにはいられない。とか、そういった恋愛衝動(恋愛は普遍的すぎて衝動とは言わないけれど)を食人という形で表現した異質ロマンスものなのだ。
どうしてもホラーとかサスペンスにカテゴリされてしまう作品だろうが、食人行為を求愛や恋心に置き換えて見ることもできる。
恋愛には相手が必要だ。食人にも相手が必要である。
計画的に相手を選ぶ者。衝動的に相手を選ぶ者。好みもある。その突き詰めたところが「骨ごと全て」なのだ。
先日観た「愛がなんだ」という映画で、主人公の女性は恋する相手に「なりたい」と言っていた。「なりたい」は少々行き過ぎにしても、相手の全てを欲するというのは普通の範疇だろう。
あなたの「骨ごと全て」欲しい。私の「骨ごと全て」受け入れて欲しい。どちらも激しい恋愛の衝動としては普通の範疇である。
つまり、激しい恋の物語だったのだが、その表現方法ね、これが奇抜。
それをやってのけてしまうルカ・グァダニーノ監督は、初めて観たけれど結構ヤバい人なのではないかと思う。
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