「美しくて哀しい物語 with 不気味なサリーちゃん」ボーンズ アンド オール bionさんの映画レビュー(感想・評価)
美しくて哀しい物語 with 不気味なサリーちゃん
吸血鬼ではなく人間を食べてしまうイーターだから、グロいシーンは当然ある。だが、ティモシー・シャラメ王子のルックがそれを中和してしまい、純愛の物語にまで昇華しようとする。アメリカの雄大な自然をバックにピックアップトラックで移動する若い2人が絵になるし、美しい。
それだけで終わってしまっては、面白くない。不気味なサリーちゃんが、美しい物語に強引に割り込んでくる。長く伸びた髪をおさげにしたインディアン風のファッションに身を包み、ヤバイ匂いがプンプンするじいさん。
このじいさん、死にそうな人間を捕食するという倫理観を持ち、ハイエナやハゲタカのように慎重かつ狡猾に生きながらえてきたと思われる。
そんでこのジジイ、忘れた頃にカットインしてくるんだけど、背筋がゾゾゾってくる強烈な嫌悪感付きの恐怖を感じずにはいられない。
生きている人間を殺し食べると言うことは、その人の人生を終わらせるだけでなく、その人の家族までも壊してしまうということにマレンとリーは気づく。
葛藤のまま生き続けるのか、捕食者としての本能のまま生きるのか。物語の終着点は、美しくて哀しい。
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