劇場公開日 2023年5月12日

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「マエストロの権威を履き違えてはいけない」TAR ター アベちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0マエストロの権威を履き違えてはいけない

2025年2月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

観るべき映画と認識していたが見逃していたのでNetflixで鑑賞。配信で映画を観るのはダラけてしまうので途中で何度も停めたりするものだが、この「TAR」は2時間半、真夜中に一気に観れた。それほどストリーの緻密さ(実在の人物と思われる程の設定)やクラッシック音楽の荘厳さやケイト・ブランシェットの鬼気迫る演技に圧倒された。
ターは時代を象徴する偉大な音楽家。有名な楽団の指揮をとり、著名な作曲家でもあり、エンタメ界の「EGOT」エミー賞、グラミー賞、トニー賞、アカデミー賞も獲っている。そして今やベルリン・フィルのマエストロになっている。NYとベルリンの移動は自家用ジェットだし、同性の妻と養子の家族もいる。金と名誉を得て、周りは思いのままに操る。しかし下手な男より遥かに傲慢になったターは不誠実な人との関わりのしっぺ返しが押し寄せてきてキャンセル・カルチャーの憂き目にあい表舞台から退場させられる。その過程の描き方、心理的に掻きむしらせる恐怖が凄い。特に演奏会に強引に割って入り指揮者を殴り倒すなど狂気でしかない。
しかし、どのような時も音楽にだけは誠実に向き合ってきた彼女に最後は別の舞台を用意してくれた。モンスターハンターの音楽指揮は再生の第一歩であると理解したい。
いつまでも忘れる事がない映画の1本になりました。

アベちゃん