「旋律 栄光 絶望 狂気」TAR ター 23さんの映画レビュー(感想・評価)
旋律 栄光 絶望 狂気
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分野を超えて評価される天才指揮者ター。
自著や新盤の出版を控え注目を集める最中、様々な問題に頭を抱えることとなる。
世間からの注目が集まれば、当然指揮者としての彼女だけでなく、人間性などにもフォーカスが当てられる。
中でも彼女の失墜に影響したであろうクリスタについて、回想にある通り肉体関係があったことはおそらく間違いがないにしろ、クリスタに対する音楽的な評価に私情が含まれていたかどうかまでは描かれていない。
その空白を補完する一つとして、チェロのソロパート担当をオーディションするシーンがある。
このシーンではステージに奏者の姿はなく、チェロの演奏だけが聴こえる。
ターは奏者個人への感情を排してオーケストラに臨んでいる姿が描かれているのではないだろうか。
ただ、各所の描写から特別な感情を抱いていたことは事実なのだろう。それら含め、序盤で揶揄していたロボットに彼女がなりきれなかった部分であり、終盤で流れた言葉には表しきれない複雑な感情の賜物である。
バッハやベートーヴェンの時代とは異なり、スキャンダルで才能が潰える時代。ことの良し悪しとは別に、この顛末に哀愁を感じる。
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