「よかった。」サントメール ある被告 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
よかった。
ヨーロッパにもアフリカ系への差別は残っているのだなということと、
子どもを親の望みをかなえる道具的に扱い、親の意に沿わない子どもを簡単に切り捨てることに、
強い憤りを感じた。
切り捨てられた子どもが若い女だった場合、その性的価値に集る愚か者を宿主にして、寄生する以外、生きる術ないよなって思った。若い女だから性的価値が高いとか、そういう価値観は、否定したいけど。
被告ロランスの境遇に、私は同情せずにはおれず、彼女の父母や、娘の父親である嘘つき・事なかれ男に、腹が立った。もう一人の主人公であるラマの恐れにも、強く共感した。
この映画は実際の裁判記録をそのままセリフに採用しているため、ロランスの言動の一貫性のなさなど、
虚構の物語であれば描かれなかったであろう部分に、ひっかかりは感じる。が、その一貫性のなさも事実
であるので、意味を考えてしまってより前のめりになった。
ラマの子ども時代の回想は、境遇が全然違うけれども、女三界に家なしという言葉が離れなかった。
私の母も、ラマの母のように、搾取され搾取され搾取され、その痛みを娘へぶつけて何とか永らえていた。
ぶつけられた痛みはもちろん忘れられないし、長じたのちは、母が味わった苦悩がより鮮明にわかり、さらに複雑な気持ちを抱いている。
男だったら生きやすいかと言ったら、そんなこともないんだけどね。
大体、人間が生きやすく、幸せになる為の世界かってゆったら、多分違うしね。
この世は、なんでかこうで、すべてものが何のためにあって何のために消えてゆくのか、わからない。
分かんないところで生きていくのが辛すぎて、人間は、何でとか、どのようにとか、どんなふうにとかっていう枠を勝手に作ったんじゃないかなって思う。で、自分たちで作った枠組みに、自分たちで苦しんでるってことかなって。
映画とは全然関係のないところに、考えが飛躍してしまったけど、この映画も2023年にふさわしい映画だったと思う。