「AIが作ったシナリオみたいで、これ以上伸びないリードぐらい薄い内容だったと思う」ファンタスティック4 ファースト・ステップ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
AIが作ったシナリオみたいで、これ以上伸びないリードぐらい薄い内容だったと思う
2025.7.25 字幕 MOVIX京都
2025年のアメリカ映画(130分、G)
原作はスタン・リー&ジャック・カービー『ファンタスティック・フォー』
地球を狙うエイリアンと戦う超能力一家を描いたヒーローアクション映画
監督はマット・シャンクソン
脚本はジェフリー・キャプテン&イアン・スプレンガー&ジョシュ・フリーマン
原題の『Fantastic Four:First Step』は「最初の一歩」という意味
物語の舞台は、アース828のアメリカ・ニューヨーク
宇宙探索にて予期せぬハプニングに見舞われたリード・リチャーズ(ペドロ・パスカル)、彼の妻スー(ヴァネッサ・カービー)、スーの弟・ジョニー(ジョセフ・クイン)、リードの高校時代からの親友ベン(エボン・モス=バクラック)は、大量の宇宙線を浴びてしまい、特殊能力を身につけることになった
リードは変幻自在に体を伸縮させ、ミスター・ファンタスティックと呼ばれる
スーは体を透明にできることからインビジブル・ウーマンと呼ばれ、ジョニーは体に炎を纏い、空を飛べる能力を有しヒューマン・トーチと呼ばれた
そしてベンは、全身が岩に覆われたような姿に変わり、ザ・シングとして慕われるものの、普通の生活とは縁遠くなっていた
ある日のこと、スーの妊娠が発覚し、待望の家族が増えることになった
宇宙線を浴びた両親から生まれた子どもということで心配するリードだったが、どんな検査をしても異常はなく、子どもはスクスクと育っていった
それから数ヶ月後、彼らの前に思いもよらない敵が姿を現す
それはメタリックな姿をしたサーファー(ジュリア・ガーナー)で、宇宙の果てにいる最高捕食者ギャラクタス(ラルフ・アイネソン)の使者だという
ギャラクタスの獲物となった星は抵抗することもできずに食われてしまう運命で、リードたちはそれを阻止しようとサーファーの痕跡を追って宇宙に出ることになった
そこでギャラクタスと対峙することになった彼らだったが、ギャラクタスは思いもよらぬ提案をしてくる
それが、リードとスーの子どもを渡せば地球は見逃すというものだった
交渉は決裂に終わり、地球のみんなに報告するリードだったが、市民から非難の声を浴びてしまう
だが、スーは市民の前に立って、「地球の為に子どもを犠牲にはしない」と言い、ギャラクタスと戦うことを宣言するのである
映画は、どの世界線の延長線上か最早わからず、フリークか制作サイドの一部だけが世界線を共有しているようなものとなっていた
「ああ、アース828なのね」でわかる人はマニアだと思うのだが、映画は初心者向けの内容になっていて、起承転結のはっきりした勧善懲悪ものとなっていた
逆に言えば、ほぼ捻りの無いストーリーで、過去のハリウッド映画をAIに学習させて、売れそうなシナリオを書いてもらった、というぐらいにテンプレ感が満載に思えた
ストーリーとしてもおかしな部分が多く、例えばギャラクタスとの交渉に向かった結果をそのまま報告するというのも微妙で、市民の反応を考えたら伏せておくと思う
また、妊婦なのに宇宙に向かうのも不自然で、地球に残って彼らを見守るでもよかっただろう
3人で交渉に入るものの無理難題を言われてスーには言えずに苦悩する、とかでも良かったし、それがバレてスーが激情する方が自然にも思える
そして、相手の真の目的がわかった段階でスピーチに繋げることも容易で、コロコロと意見が変わってなびく人々を描いたところであまり意味はないように思えた
さらに、惑星を丸ごと食べるというギャラクタスだが、実際には機械のようなものが食べていて、その栄養素みたいなものを注入されているだけだった
なので、実際のギャラクタスはそこら辺の高層ビルぐらいの大きさで、一気にスケールがしょぼくなったような気がする
彼自身が単身で宇宙船みたいなところから地球に降りるのだが、この辺りも物理的法則完全無視で、あの宇宙船が地球の近くに現れただけで甚大な影響が出ると思う
ギャラクタスを宇宙の彼方に放り出そうとするブリッジも相手が木星ぐらいにいる段階から建設が開始して完成しちゃうので、映画の中の時間はかなりの年月が経っている
それゆえにすぐそこにある危機にも感じられず、子どもを奪うだけなら、あの宇宙船で近くまで来る必要もなかっただろう
サーファーに奪還を命じて待っていれば良いだけなので、単に地上戦を描くためだけに登場させたように思えてしまった
挙げるとキリがないので割愛するが、全てにおいてサプライズがなく、アクションも地味で動きが少ない
未公開のファンタスティック・フォーのメンバーのカメオ出演もほぼわからないレベルで、ポストクレジットの謎の男も顔すら見せない
見どころはエンドクレジット後のアニメのOPぐらいで、懐古厨なら感涙の展開だったのかな、感じた
いずれにせよ、極めて「普通」の作品で、これを現時点で公開する意味があったのかは謎だった
能力を得るシーンは割愛されているし、地下帝国とかの戦いもダイジェストだったので、後半にスーが助けを求めに行ったキャラも「こいつ誰だったけ?」みたいな感じに思えた
一応、彼らを統括するチーフ・リン(サラ・ナイルズ)もいるのだが、いてもいなくても良いレベルだった
そう言った脇のキャラの描き方も含めて、もっと洗練すべきものがあったのではないか、と感じた