「アメリカの大作映画で久しぶりに日本が出て来たと思ったら」キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド 60代の男ですさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカの大作映画で久しぶりに日本が出て来たと思ったら
新たに発見された海洋資源をめぐってアメリカが日本と対立している状況下で、大統領ハリソン・フォードは日本との交渉に苦労していたが、それを開戦に導こうとする悪の黒幕がいた。
二代目キャプテン・アメリカと若い二代目ファルコンが空を飛んで、米軍と日本軍(アメリカ側は軍と言ってる)が向き合っている太平洋の海域にやってくる。
しかし悪の黒幕はアメリカ軍内部のあらゆるところに、ある歌を聞くと自意識が消えて意のままに操れるよう薬物で仕込んでいる人間を配置していて、それを発動させて2機の米軍機に日本艦船に向けてミサイルを撃たせる。
日本側は無能なのかまったく防空システムを動かさず、直撃を受ける。
すぐに怒った日本の戦闘機隊がアメリカ艦船を攻撃し始めたので、あわてた大統領が日本の首相・平岳大に電話で、攻撃の意志がないことを必死に伝え、主人公が日本の戦闘機に並走してこれは間違いだとパイロットに直接訴えるが、首相もパイロットもこれを無視、アメリカ艦船への攻撃をやめない。
そして物わかりの悪い日本側が事態を理解するまでの間、二代目同士のキャプテン・アメリカとファルコンが、必死に日本のミサイルを無効化し続けたので、結局、アメリカ人には被害を出さずに終わらせることができる。
めでたしめでたし、という雰囲気だが、誰も気に留めていない爆撃された日本艦にも死傷者など出ていないことを祈るばかりだ。
というのが中盤の山場なのだが……。
このあと赤いハルクの話などが展開していくのだが、ともかく僕にはこの太平洋上の開戦の危機を描く部分が不快でしかたなかった。
悪意ある韓国映画「非情宣言」に似た居心地の悪さ。
現在のアメリカ映画の超大作に出てくる外国と言えば中国が常連なのに、久しぶりに日本が出てくる話だと思えば、なんのことはない、短気で話が通じない国として描くためとは。
やっぱりね。これが友好的でアメリカを助けるいい国、という役だったなら間違いなく中国だったんだろうけど。
簡単に他国艦にミサイル攻撃を始めるなんて、どうしても日本人には違和感しかない。
外国の人にはどっちでもいいことなんだろうが。
今のアメリカは、歴史上始めて、イデオロギーで対立している国のためにでも自主的にプロパガンダ映画を制作する国になっている。つまり中国政府に国内で公開する外国映画に選んでもらうため、お金をかけた超大作は必ず、中国政府に気に入られるように作る。商売だから仕方ない、お金を稼ぐためだから仕方ない、のか?
作品全体としては、キャプテン・アメリカという大きすぎる先代の名前を受け継いだ主人公のプレッシャーと決意を描くもので、それはよく伝わってくる。
ネット配信だったシリーズ(僕はブルーレイの購入で観たのだが)「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」の劇場版続編という感じで、真っすぐあの延長にある作品だ。
アクションシーンでの、キャプテン・アメリカ特有の、盾を使ったアクションで、盾の動きがなぜかピンとこないものになり、これまでと違って小気味良さがない。
ファルコン時代から続く、翼を使ったアクションも、なぜか爽快感が感じられないものになった。これはワカンダ製だからといって、厚紙程度に薄っぺらいのにミサイル爆発も平気という異常な頑丈さのために、現実の生身のアクションという感じがしなくなっているためではないかというのは、僕の推測。キャプテン・アメリカは生身の肉体を感じさせるアクションが特徴だと思っていたので。