「“ガス”に期待を託して・・・」キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド ふぇるさんの映画レビュー(感想・評価)
“ガス”に期待を託して・・・
ドラマ視聴前提のフェーズに愛想を尽かし、2、3シリーズは鑑賞したが、キャプテン・アメリカに関しては視聴していない。これまでは延長線上でオリジナルのキャラが登場していたが、今回はエンドゲームまでのファルコンとして観る事になる。
今回は敢えてドラマを視聴しないでの鑑賞に挑んでみた。
それが通らなければ今後マーヴェルと付き合う事は難しいと思っていたし、もちろんそういう観客を前提に作っていないともはや映画として機能はしていないと思ったからだ。
あまり気が乗らないながらも唯一の希望があった。
それはブレイキングバッドの“ガス”こと、ジャンカルロ・エスポジートが出演しているからである。
彼の悪役を見たかったし、彼をスクリーンで見れる事に期待を寄せていた。
しかし、それは叶わぬ夢であった。
冒頭から威権を見せつけるサイドワインダーとしての彼への展開を期待していた。
ファルコンの乗っている車を襲撃した時が頂点だったであろう。しかし彼は無惨にも負けてしまうのである。
そう、彼はただの雇われの傭兵だったのである。
彼がヴィランとして活躍すると期待してしまった。
早々に退場してしまったので作品に目を向けてみよう。
ファルコンに相棒のような者がいたり、元ブラックウィドゥなど一応説明台詞のような者があるのでどの位置づけかは把握出来る。
ただし、どのキャラクターも強い印象は残らず、
戦闘シーンも目新しいものはなく、陳腐なものになってしまっている。
バッキーがサプライズとして登場するも弱い。
次がサンダーボルツなんだからそれは出てくるだろう。
リブ・タイラーはもはやキャラクターとしてではなく俳優としてのサプライズ出演だろうがそれも弱いのである。
これまでのマーヴェルのように開き直ってブルースかジェニファーをハルクの制御の仕方を教えるなど理由をつけて登場させた方が盛り上がるのではないかと考えてしまう。
そして、脅威の対象として充てられたのが何故日本なのか。
これまで対立することの無かった米国と日本が敵対することで事の重大さを表したいのだろうが、米国と対等に敵対出来るとは思えないしむしろ敵対したらヤバい国はもっとあるはずだ。
また惜し気もなく映し出される桜並木。
桜で日本を表現するという2025年にもなって未だに行うセンスが疑わしい。
Shogunで表現できた日本や同作で活躍した平岳大も出演していることだし、もう少しなんとかならなかったのかと思う。
無かったことのようにされているエターナルズでの重要な要素であるセレスティアルズも忘れてないよと言わんばかりに背景として登場しているが特になにも進展がない。
全体的に無難な内容だが、これまでのマーヴェル作品と比べてしまうとやはり弱いという印象である。
ファルコンの超人ではない弱さを伝えるはずが、作品全体が弱くなってしまっている。
そしてこの“弱い”というのがこの時代には致命的になる可能性がある。
多様性の時代を終わらせようとしている今、
女性主人公や黒人主人公の映画がコケてしまうとさらにそれらに拍車をかける事になるだろう。
決して俳優陣が悪い訳でも無いのに側から見るとそうであるかのように評価されてしまう。
今作ではまさにファルコンに寄せられるプレッシャーは失敗が許されず、とてつもなく大きいものなのである。