「話せばわかる?新世界と銘打つにはまるで不十分で、何をしたいのかわからない(アンソニー・マッキーは悪くない、むしろ本作の中で数少ない良い点だ)」キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5話せばわかる?新世界と銘打つにはまるで不十分で、何をしたいのかわからない(アンソニー・マッキーは悪くない、むしろ本作の中で数少ない良い点だ)

2025年2月15日
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傑作『ウィンター・ソルジャー』を踏襲・彷彿とさせる展開がたくさん見られる(ex. スター・ウォーズ4『新たなる希望』の話の筋をなぞった7『フォースの覚醒』みたい)けど、色々と薄い。そもそもスティーヴ・ロジャースとの差異を出すなら違う物語のほうがいいと思うが(同じ物語だからそれに対峙するときのキャラクターの反応などで差を出せるとも考えられるが)。大味に終始もっさりとしていて、何をしたいのか伝わってこない消化不良感。クリエヴァから襲名してタイトルロールを演じる大作での単独初主演アンソニー・マッキーは応援したいけど、MCUの長い冬・夜はまだ明けないか…。道を見失ったまま未だ見つけられていないようだ。
冒頭のメインタイトルが出るまではスタイリッシュで、そこからアンソニー・マッキーもハリソン・フォードも別に悪くなく普段の彼らの魅力は感じられるし、昔の=つまりとりわけコケ始めた『アントマン&ワスプ : クアントマニア』以前(それよりもっと前)の初期MCU作品に戻ろう・立ち返ろうという気概、原点回帰志向(本編尺含めて)は感じるけど、マインドコントロールはいくらなんでも雑でご都合主義過ぎやしないか?ヒドラという思想が浸透していた、みたいた敵側の奥行きがまるでないじゃない。なんじゃその物語の広がりもへったくれもない何でもありになるような目に余るテキトー設定は。ミステリーに例えるならご法度とされる「記憶喪失」「双子」等と同列。鑑賞前に期待していたような「敵が内部に入り込んでいて、誰が敵味方か見分けがつかない…」みたいなスリリングさは驚くほどまるで皆無だった。
色々とピントを絞れないまま粗だらけで大して中身のない強引な展開で押し切る。やはり脚本家が複数人クレジットされているのは度重なるリライトと再撮影の影響だろうか?『ウィンター・ソルジャー』的ポリティカルスリラーを期待していたら肩透かしを食らった。本作こそはと期待したものだが、もうマーベル作品は映画館に行かず、勝手に配信スルーで本当にいよいよいいかもしれない。濃いのに薄いを地で行くこれはいただけない、記憶に残らない。ファンサービス過多に『インクレディブル・ハルク』と『エターナルズ』の後片付けするためのイースターエッグ祭なら、話の筋的にブルース・バナー(と作中言及されるアントマン?)も来てほしいところ。

「アベンジャーズの中でも人格者」的な立ち位置から敵を諭して勝つサム・ウィルソン。チームをパワーというより精神的な面から支えるキャップとしての立ち位置からは正解だけど、次回作からもそう勝つのかな?77%の確率で。あと、生身の人間のアクションを押していた印象だけど、開始早々ブラックパンサー的なワカンダ・テクノロジー全開でツッコみたくなった。
サディアス・ロスの変わろうとするドラマ。これまた名優の故ウィリアム・ハートからバトンを渡された"最後の映画スター"ハリソン・フォードが、思った以上に本編全編にわたって出番があるという嬉しさ!又、インディ・ジョーンズを引退してもハリソン・パンチにあの笑みをまた見られる喜び。最近引退を匂わせるような発言もいよいよしているらしいけど、これは引退作にはしてはいけない、というか一映画ファンとして物足りない・勿体なく思うので相応しい作品に出てほしさもある。それこそ『さらば愛しきアウトロー』からの『エンドゲーム』のロバート・レッドフォードみたいにその後のサプライズ・カメオ出演はあり?ずっとアベンジャーズの目の上のたんこぶ的な存在であったサディアス・ロスは、これで退場か否か、運命やいかに。
ホアキン・トレス役ダニー・ラミレス演じるお喋りクソ野郎な新ファルコンが、一昔前の黒人が演じるような白人ハリウッド映画らしいコメディリリーフ!「おい、それでいいのか!」と余計なお世話だろという少し要らぬ心配をしたけど、きっとここから這い上がっていくのだろう。あと『トップガン マーヴェリック』に続く空中戦?ドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』を観ていないと、主人公周りで分からないキャラクター達が出てきて少しキツいかも。イザイアはいい。
ティム・ブレイク・ネルソンがブロッコリーに。今回出演するのは知っていたけど、「踊る大捜査線」映画3作目(3作目、4作目は本当にクソ映画)で、1作目の犯人役のキョンキョンがまた犯人役で萎えたときみたいな。てか、17年前の映画の記憶を観客に求めるのは少し酷じゃなかろうか(見直していたが)?ポストクレジットシーンもおざなりでまるでワクワクしなかった。
蓋を開けるとただの実動部隊だった(?)ジャンカルロ・エスポジートも貫禄たっぷりにそれらしいこと言っているけど、よくよく聞いたら大したこと言っていないのよな。ちなみに、昔からいながら近年『マンダロリアン』などアクション大作の悪役が板についているから、今後『Mr.ノーバディ』みたいな映画に主演して、リーアム・ニーソンのようなアクションスターになる可能性があるのではないかと読んでいる。
ジュリアス・オナー監督『ルース・エドガー』のときのあの一面的でないキャラクター描写と奥行きのある映画作り・語り口ストーリーテリングはどこへ行ってしまったのか?

最後に触れずにいられないのが、雑にテイよく使われている日本の存在。だってこんなに日本のことが取り上げられている作品なのに出演者による大きなプロモーションも無く、調べれば吹替・溝端淳平ばっかり推されているなんて(アンソニー・マッキーと溝端淳平の対談動画はある)!そもそも今の時代に、(厳密には敵国ではないにしろ)具体的な国名を名指しで挙げるなんてこと自体レアで、(国名を伏せた)仮想国や国境を越える組織集団などが主流だろう。明らかにロシアな『トップガン マーヴェリック』でさえ?そして、国力だけで言えば中国などの方が自然だろうに、なぜか日本。しかも作中の日本は、アメリカの同名も要らないんじゃないかというくらい、なんだか強そうに描かれている。それをワッショイとも取れるかもしれないけど、どう考えても絶対に怒らない(どう描いてもマズくならない)落ち目の国だからだろう。

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