「見応えあるサスペンス・アクション!」キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0見応えあるサスペンス・アクション!

2025年2月14日
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アヴェンジャーズシリーズはドラマシリーズまで制覇するほどのファンではない。「ファルコン&ウィンターソルジャー」も観ていないのだが、本作はそんなライトなマーベルファンでも単体映画として楽しめる作りになっていてとても好感をもった。

私は「アヴェンジャーズ エンドゲーム」以降に足りなかったのはやはりスター性・華だと思っていた。

インディペンデント映画で評価されている若手役者や監督等、ヒーロー映画に引き抜くのは少し違うのではないか。(もちろんブロックバスター映画との化学反応を期待したのかもしれないが、個人的にそんじゃそこらのポップコーン映画じゃねえぞ?という逆張りなんじゃないかと思っていたし。)そんなエクスキューズなんて使わずに、マーベル映画は花形役者で王道を歩むべきだ!と思っていた。

そして本作。ハリソン・フォードがまた大統領を演じる?!エアフォース・ワン以来の体を張るアメリカ大統領が観れるのか?!ここで大スターを起用するとはマーベル、わかってるじゃないか!と重い腰をあげて観に行きました。

大手シネコンのビッグスクリーン。客入りは微妙。そうですか。やはりそんなに期待されてないのか。(初日はほぼ満員だったアイアンマン、スパイダーマン、アヴェンジャーズと比べて少し寂しくなった。)

そんな期待されていない新キャプテン・アメリカ。

オープニング。

おや、いつものコミックパラパラのマーベルロゴが出て来ない。90年代を彷彿とさせるブラウン管テレビの電子ビームのような光の演出。そしてモノクロのマーベルロゴ。渋い!渋すぎるぞ!

(この電子ビームの光の演出というのが、本作の悪役が使うトリックになっているのも映画の仕掛けとしてとても面白い。)

全体的にざらっとフィルムの質感の映像。良い。
最初はやはりハリソン・フォード。さすが大スター。映るだけで絵になる。これだよ。これが欲しかった。

そしてサム・ウィルソン。演じるアンソニー・マッキーは「8Mile」のラストでエミネムさんにラップでボコボコにされたあのお方だ。良い役者だが、主役を張るほどの華はないと思っていた。しかしカール・ランブリー(これまた渋い俳優)演じるイザイアとの掛け合いから、ハリソン・フォードとの掛け合い。良いぞ?!(カール・ランブリーの演技力が凄まじ過ぎて泣きそうになったが、それに引っ張られたのかアンソニーもどんどん良くなっていく。)

ポリティカルサスペンス的な要素(一歩間違えたら戦争になる)のハラハラ感と、F14(これまた90年代かよ!っくらいビンテージの機体で笑った。)とファルコン、キャプテン・アメリカの空中戦は見応え抜群。
ここで大統領がレッドハルク化してもっと決定的なピンチになって欲しかったところだ。(本作はクライマックスでも後もう一歩ヒーローの大ピンチに踏み込んで欲しかった。ここが星マイナス1ポイントになってしまったところ。)

血清を打っていないから身体は超人ではない。スティーブは間違った人選をした。と語るサム。
本作のサムのキャプテン・アメリカになり得るのか?という問いは、そのままリアルのアンソニーがクリス・エヴァンスに次ぐキャプテン・アメリカになって良いのか?という問いに転換される。

また、本作は新たにアメリカ合衆国大統領に就任したロスの視点も入れることで、アメリカを導く2人のリーダー(キャプテン・アメリカと大統領)の葛藤という軸が分かりやすく提示される。
ただし、この大統領の葛藤が娘に認めてもらいたいという極めて個人的なことしか語られず、キャプテン・アメリカの方が全然色んなもの背負ってるじゃねぇか!と突っ込まずにはいられない。ハリソン・フォードの好演によりギリギリなんとかなっているように感じるが、ハリソン・フォードじゃなかったら悲惨なことになっていたと思う。

サムはキャプテン・アメリカとしてどうあるべきか。

本作は決してその問いに明確な答えを出したわけではないと思う。クライマックスとしてとう一歩踏み込んで血清を投与されていない生身のキャプテン・アメリカが如何にハルクという肉体変化の象徴ともいうべきキャラクターを相手に勝つのかを示して欲しかった。

ただし、今までのアメリカ映画・ヒーロー映画では軍事力や力で敵を凌駕した方が勝ちという傾向にあったが。本作はそうではない方向を示した。

今後は「スタートレック」のように外交問題として宇宙人と交渉するアヴェンジャーズ映画は観たくないが。今後、彼がどういうアヴェンジャーズを再現していくのかは気になるところだ。実質本作で新たなフェーズに入ったといっても過言ではない。

追記1:
日本がめちゃくちゃ好戦的に描かれているのは一旦置いといて、日本の首相役を務めたのは平岳大さん。「SHOGUN 将軍」で宿敵石堂を演じており、本作の声が掛かったのも「SHOGUN 将軍」の撮影がちょうど終わった時とのこと。

平井さんは5年ほど前から拠点をアメリカに移して活動しているそうで、「SHOGUN 将軍」を機に多くの日本人俳優がハリウッド映画に進出していくのはとても喜ばしいことである。

映画内での外国の政治家やその行動がステレオタイプに描かれてしまうのはお互い様で、その際たるものがロシア・中国だと思う。本作の日本の好戦的な態度は「SHOGUN 将軍」影響下かは分かりませんが、真田広之さんが切り拓いた道に多くの若い役者達が続いて行ってくれるのも喜ばしいことだと思いました。

追記2:
「ファルコン&ウィンターソルジャー」を観賞しました。
ドラマシリーズとしてかなり楽しめました。今まで観たディズニープラスのスターウォーズやマーベルのドラマシリーズの中でもベスト級だったと思う。逆にドラマであれだけ出来てしまっているので、今回敢えて映画にしないほうが大統領の葛藤をもう少し丁寧に描けたんじゃないかとも思ってしまった。

ヘルスポーン