宮松と山下のレビュー・感想・評価
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静かにじわじわと明らかになる事実に目が離せない
表情で魅せる役者揃いで、静かな空気であるのにもかかわらず目が離せない作品だった。
記憶を失う前と後の人格差は見事で、鍵泥棒のメソッドを思い出した。
演じる者
香川さんの報道がありながらも、無事に公開されたので良かったです。作品まで埋もれてしまっては製作陣が不憫でしかないので。
今作の現実と演技のバランスが絶妙で、前半ではそこは映画の世界なのか!と感心するものがありました。ただ、見慣れてくる後半ではインパクト不足に陥ってしまいました。自分は何者かを模索する中で、偽りの宮松と本物の山下、これが逆転したり戻ったりのシリアスな会話劇はそこそこ楽しめました。ただ大きな波はないのでやはりインパクトには欠けるというのが最初から最後まで付き纏った印象です。
映画自体はかなり短い作品なんですが、間の取り方が独特というか長めで、個人的には合わなかったです。そのため体感は110分くらいに感じるまでには引き延ばしていたなぁと思いました。
役者陣のパワーはしっかりありましたし、やはり香川さんの存在感はさすがだなと改めて感じさせられました。少し渋めのスタイルの映画でした。
鑑賞日 11/30
鑑賞時間 20:50〜22:25
座席 G-7
もう少し脚本がしっかりしてるかと期待していた。ぐたぐだ。俳優は皆...
もう少し脚本がしっかりしてるかと期待していた。ぐたぐだ。俳優は皆うまい。オーバーな演技が目立った香川について、言葉がない表情や仕草での演技がよかった。特に静的な演技。思い出したあとの、妹とのシーンは素晴らしかった。役者だからこそできた演技でもある。がそもそも人生も演技。
エキストラをやることに精神病理学的な意味があることをよく描いていた。映画そのものもリアルと虚構が浸透していたが、宮松の日常においても入り込んでいるのが描写として良かった。彼は抑圧していたものの直面化を結局避けたのだろう。
華やかではないが味わい深い
香川照之がエキストラ俳優役で主演という設定にひかれて、それ以上の事前情報は入れずに観ました。
妙な違和感のある、座りのわるさを感じる冒頭でしたが、物語の終盤では感じなくなりました。
記憶をなくした主人公の不安定さを演出していたのでしょうか。
全体をとおしてセリフが少なく派手な演出もなく地味です。
その分、役者さんの佇まい、仕草、視線のひとつから多くのことが感じとれるようです。
映画館から自宅に帰ってからも、彼のあの表情は……あのときの彼女は……と思い返すことができるほどそれぞれが印象深いです。
香川照之を始め、役者陣が彼らでなければ表現しきれなかったのではと思わされます。
鑑賞後に今作に関するインタビュー記事を読みました。
監督集団5月が掲げる「手法がテーマを担う」という言葉のとおり、主人公宮松のエキストラ俳優としての日常シーンはおもしろく新鮮な体験でした。
脚本に物足りなさは感じますが、監督集団のポリシーを理解するとなるほどなとも思います。
見せ方がおもしろく、なにより役者陣の演技がよく、とても味わい深い映画でした。
過去のない男
過去のある出来事によって記憶を失った男が、日々、エキストラとして斬られ役を演じる。冒頭の時代劇シーンはまだわかるが、次の焼き鳥屋のシーンから、現実なのか劇中劇なのか、見境がつかなくなって、見ている方が不安になる。これまでの日本映画ではなかったようなトリッキーな作品。
セリフは必要最小限、役者は無表情、カメラは固定と、初期のカウリスマキ作品のような味わいと言うべきか。
中盤から、男の過去が少しづつ明らかにされ、妹(腹違い?)との秘密がほのめかされるが、そのあたりの種明かし的な展開は、序盤の緊張感と比べると、トーンダウンした感じ。殺されても、また生き返る、それを繰り返すこの男の人生とは何なんだ?の一本槍を通した方が面白かった気がする。
香川照之は、タバコを吸う長回しでの表情が秀逸。野波麻帆には騙された。
それにしても、3人のクリエイターの共同脚本・演出とのことだが、3人で一体どうやって物事を決めていったのかが気になるところ。
「鍵泥棒のメソッド」のスピンアウト作品としてもいい
宮松はエキストラといっても全くの素人ではない。クレジットに役名は載らないが立派な役者。
彼の現実の描写シーンと思わせて、芝居の一場面のパターンが最初からいくつか続くので、時代劇でないと劇なのか現実か混乱させられるが、それも楽しい。
自宅アパートに帰宅すると女(野波麻帆)が待っている。「お腹すいた?何か作ろうか?」と宮松がいう。女は「疲れたからもう寝るわ」と返す。プロデューサー(?)役の大鶴義丹がブルガリのキーホルダーを女にプレゼントするシーンがあり、彼女は女優。自転車で仲良く出かけ、中華料理屋に寄っている最中、店の外から店内を窺うプロデューサー。自転車のキーにはブルガリの刻印のあるキーリングがぶら下がっている。それを確認したプロデューサーは諦め顔でしぶしぶ帰ってゆく。記憶喪失になった宮松には現実だったのかセリフのある芝居のワンシーンだったのか区別がつかないのには悲哀を感じた。役者としてはしりの頃にプロデューサーに睨まれて、干されたが、端役を続けているのかもしれない。
記憶喪失の原因はタクシー会社内での暴行だとわかるが、時系列が曖昧で、エキストラを始めたのはタクシー会社から姿を消して、ロープウェイの仕事についてからだと思い込んでしまったが、そうではないのかもしれない。 宮松というのは芸名のようだが、ロープウェイの同僚が宮松さんと呼んでいることから、記憶喪失後にゲットした本名とも考えられる。実家に夫と住む腹違いの妹(中越典子)は時計は父親の形見だと言うが、カマをかけているのかも。思い出させたくない秘密がありそうだ。失踪届けを出して、7年以上が経過して、すでに死んだことになっているのかもしれない。実家の名義も妹に変更済み?両親は交通事故で同時に亡くなったのだろう。後半の最期になって加害者は義弟(津田寛治)であることが明かされる。山下だよねと言って撮影所を訪ねてくる(尾身としのり)もタクシー時代の同僚だ。尾身のシリアスな表情と演技が大変良かった。さすがにずっと同居はできまいとアパートを斡旋してくれる。タクシー運転手から何かの会社を起業したような余裕のある風情だった。縁側でショートホープを吸う吸い殻には津田の吸ったタバコの白いフィルターの吸い殻も混じっている。
腹違いの妹と仲が良すぎるのを夫が嫉妬して起きた事件のようだが、隠された事実がまだまだたくさんありそうで、大人のミステリーとしてもとても味わい深い一作だった。
キーホルダー、記憶喪失、役者から鍵泥棒のメソッドのスピンアウト作品としても楽しめた。
スピンアウト作品でもよいから、味わいのある次回作を期待している。
役者の表情怖い
セリフの少なさを表情しぐさで補いきれていないので、
悲しいのか辛いのか苦しいのかがさっぱりわからない。
暑苦しい演技の得意な香川照之が心情を抑えてシリアスに演技するとなんだか怖い。犯罪者の顔に見えてしょうがない。
善人の役なのにネタバレするまで悪人の話かと思ってしまった。ストーリーにひねりなくつまらんかったとしか言いようない。
説明セリフ一切なしのストロングスタイル
ちょい役を数多くこなす宮松に意外な私生活が存在していて、ここから物語が始まっていくのか期待していると、そのエピソード自体が、映画のワンシーン。クラクラするようなメタ構造のボディーブローを喰らったところで、宮松の記憶の断片がフラッシュバックとして挿入される。
宮松が記憶の輪郭をぼんやり思い出した時の表情、そしてはっきりと思い出した後の後ろ姿。セリフはないが、はっきりと心の声は聞こえる。
静寂とゆったりした間の中で、バックストーリーを想像する贅沢な時間がそこにはある。
翳のある妹役の女優さん、どこかで見たことがあると思ったら、必殺仕事人で笑顔を振りまいていた中越典子だった。いい演技してたなぁ。中越典子の表情や仕草で、宮松に対する気持ちが伝わってくる。
香川照之に対する負の感情がありながらも、褒めたくなる。そんな作品でございました。
ちゃんと説明されない空白の部分が不気味な作品
とにかく冒頭から不気味な雰囲気が漂う作品でした。
まず冒頭の主人公の宮松が時代劇とヤクザ物の現代劇にエキストラとして出演しているシーンがとても違和感がありました。
最初はその違和感がどこから来るものなのかピンとこなかったんですが、徐々にそのシーンのどこが変なのか分かってきました。
まず変なのは役者の演技を撮ってるはずのカメラがなかったのがすごく違和感でした。
それだけじゃなくて他のスタッフも全然見当たらなくてかなり不気味でしたし、演技だとしたら全然カットがかからずにどんどんシーンが展開していくのも不気味過ぎました。
この冒頭のシーンだけでも虚構と現実の境目があいまいになるような感覚に陥りました。
上記のように全体的にどこまでが演技でどこからが実際の宮松の生活なのかが非常にあいまいに描かれていて、途中まで宮松には奥さんがいるんだと思い込まされていました。(奥さんとのシーンは実は宮松が出演している映画のワンシーンだった。)
こんな感じで全体的に映画内映画を描く入れ子構造のメタフィクション要素がとても強い映画でした。
最初は全然ちゃんと説明されない、なぜ宮松はエキストラをしてるのか?、なぜ宮松は記憶喪失になったのか?、というような疑問が、後半にさしかかるにつれて徐々に浮かび上がってくる構成は良かったです。
ただあまりに静かで地味な映画なので個人的にはちょっと退屈をしてしまいました。
約90分間延々と香川照之の仏頂面を見続けさせられる映画。そのうち話はどうでもよくなってくる。でも不思議に飽きない。何故、「宮松」なんて珍しい名字にしたのかが一番の謎だ…
・冒頭の日本家屋の屋根の瓦、瓦、瓦…
・出番の合図にエキストラの肩をたたく女性スタッフ
・エキストラに吹きかけられる砂、砂、砂…
・撮影衣装のまま大衆食堂の券売機の前に並ぶ男女
・ローブウェイの曳索の巻き上げ装置
・撮影帰りに立ちよった中華料理屋で突然撃ち殺される男と後に続く銃撃戦
・うだつの上がらない男と何故か同棲している妖艶な美女
・美女に送った高価なホルダーがママチャリのキーホルダーにされているのを眺める“パパ”らしき男
・円定規で枡目に律儀に円を書き込んでいく宮松
・棒立ちの宮松に抱き付く妹
・“外傷だけならあんなにすっぱり記憶がなくなることはないよ”“心理的なものなんでしょうか”という医師と看護師との会話を、病院の休憩室で聞いている宮松の顔
山下、だよな?
映画のワンシーンなのか、撮影現場なのか、実生活なのか、ぺらっぺらっとめくるページのように場面がどんどん転換していく。エキストラを副業にして淡々と生きている宮松。不可解な彼の生き方、過去が、のちに明らかにされていく展開がミステリーぽい。記憶を失くして様々なエキストラをこなしていることは、別の人生を細切れに渡り歩いて生きているようだ。そのときそのとき、いろんな人生に身を置く。言い換えればそのとき限りそのとき限り、いろんな人生を捨てていく。
あの一件以来、人気絶頂から急転落してしまった俳優香川照之という人生は、この映画を通してみてみると、もしかしたら人生そのものが映画の役を演じていた、か、今も演じている、か。もしくは、俳優で成功してたのは幻で、真実はただの皺深い不愛想なオッサンなのか。そう思ってしまうのは、ここにでてくる「香川照之」は冴えないオッサンで、かつて"大和田常務"などいくつものアクの強い役をこなしてきた「香川照之」とは思えないほどモッサリしているからだ。どっちがどうなのか、こちらが幻惑させられる香川照之という役者のすごさ。当人にとって現状は歯がゆいのだろうかと思ってはいたが、いや、その不愛想な表情の奥には、名も知れぬエキストラを演じる人生の居心地の良さを感じているのか、とさえ思えた。
つまり。この映画をじっと見つめれば見つめるほど、どんどんとこっちが惑わされていく。それはちょっとした快感でもある。
地味だけれど、心に刺さる
予告の動画や公式サイトは見ず、ストーリーの概要だけ拝見しての本編。
全体的に地味な印象を受けたけれど、現実とエキストラの役とが交じり合い、疑問符を感じながらも映画自体に引き込まれていきました。
記憶を失ったタクシー会社での伏線の回収も、鈍感な私には予想外だったため、そうだったのかと思う、正に映画的な手法にハマり、最近観た中ではじっくり心で感じられた作品でした。少なくとも、大作のBPよりは良かった‼︎
しばらくしてから「もう一度観たい」と思った、数少ない作品でした。
非常に作り込まれた人物、トリッキーな日常。
スキャンダルで公開危ぶまれてたけど観れて良かった。
いくつかのレビューにあるように、余計な説明の無い行間の長いヨーロッパ映画みたい感じですが、佐藤雅彦流の現実とエキストラの交錯がトリッキーで私は飽きずに観れました。ストーリーも難解というわけではありません、見てればわかります。見せ方も映像的で気が利いてます。
そしてなにより香川氏の揺るぎない存在感、キチンとしてるのに何処か虚ろなかんじ、和かに己を嘲笑うようにタバコをすう後ろ姿はやはり凄い役者だと痛感しました。
絶頂期に疎まれてはめられた感アリアリのスキャンダルでしたが、仕事を選んでゆっくりとカンバックして欲しい役者さんです。
じゃない方
172本目。
最初から頭の中を迷宮入させそうな展開。
おまけにセリフ少ないから、イヤでも考える時間があるけれど、最初できっとと思ってからは、そうなるそうなると思ったけど、そっちの方が安易な訳で。
寧ろそっちだった方が、シラケるんだろうな。
でも設定が上手かったし、あの終わり方で良かったと思う。
あれ以上、広げちゃうと違う方向に行ってしまいそうだし。
中越典子って、あんな声だったけ?
そっちの方も、気になってしまう。
ややわかりにくい点もあるけど…。
今年339本目(合計614本目/今月(2022年11月度)26本目)。
結局、他の方もいろいろ書かれていますが、監督の方は本作品がレビュー作ということであり、完全な理解はまぁちょっとむつかしいんじゃないか…という印象です。
何が現実世界か、何が(現実世界で見ている)映画という媒体を通す「仮想空間」なのか、そして今「どちらの方向」で見ているか、そういうところに映画の論点が結構多いです。
それだと哲学枠じゃんとなりそうですが、ちゃんといろいろ演技含めて工夫は多いです。確かに思えばなかなかこういったことに入ったことがない監督さんの意欲を消極的に踏み込んでどうこうというのはよくないので、「気にはなるところはあるが、趣旨は理解可能」で満点にしました。
まぁどなたも言われていますが、「地味な映画」、それはまぁ覚悟しなきゃいけないでしょうね。アクションやらなにやらというようなシーンは「一部を除いて」(この「一部」が何なのか等はネタバレになってしまう)存在しないです。
全59件中、21~40件目を表示