「家出のススメ」ドライビング・バニー bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
家出のススメ
なんかアメリカの田舎町を舞台にしてる様な感覚。黒人がアボリジニーに入れ替わっただけ。道路が日本車だらけなのも、それっぽいw
最近、そこまで珍しいとは言えなくなったニュージーランド映画です。年に数本は広島でも公開されてますが、結構、記憶に残ってたりしますが、これも結構来ました。
「早熟のアイオワ」のラストは、母親を捨てた娘三人(うち二人はジェニファー・ローレンスとクロエ・モレッツ)がジェニファーが運転する車の中で、カセットで流れる「Ain't No Mountain」を熱唱するんです。母親を捨てたトーマシーが熱唱(なんて曲かは知らないけれど)するシーンは、それを思い浮かべてしまいました。
感情を抑える事が出来ないバニーの行動は、徐々にタガが外れて行きます。家庭支援局のルールを破り、愛娘と誕生日を一緒に祝うと約束した事が発端。その約束を守るために、罪を重ねて行き、最後は人質監禁の立てこもり。お役所の無理解。面接のために提供されたスーツ。姪のトーニャを救わなければならないと言う正義感。これが、彼女の行動をエスカレートさせて行くと言う展開の分かりやすい理詰め感が好き。
でですよ。
売り出し中のマンションに勝手に入り込んだり、子供たちの里親の住所を盗み見したり、クルマを盗み出したりと、色々と違法行為を積み重ねて行く訳ですが、彼女自身が罪の意識を感じたのは、アボリジニー一家を彼女の騙しに巻き込んだ事だけ、おそらく。
で、なんで、あそこだけ罪の意識を感じたかと言うと、一家は無垢で暖かく正直だったから。要するに、その他は「冷酷」だったり「悪」だったりと言う位置づけ。だから騙しても、嘘をついても、罪の意識は無い。
ちょっと、そのあたりは左翼的だったりするんで、多少の嫌悪感はあるものの。そこを救うのがトーニャと言うのが基本的なバディの建付け。この設定が良い。
カッター一つで立てこもる相手に、特殊部隊を派遣する警察もアホですが、アホなだけにトーニャの逃走も許してしまうと言う。
物語りには自然と引き込まれるし、特別な映像表現は無いけれど、淡々と進む「画」も自然だし、セリフ回しも芝居がかったくどさが無く、オチも「有り得そうだと」納得できる範囲内。要するに、素直にストレートに入り込める映画でした。
良かった。
結構。