「古きエストニアの寒村での生活は窃盗と使い魔とともに... 狡猾さが至上命題の人間関係の中に在って一途な恋が美しくも残酷に雪原を木魂する幻想的モノクロ映画!!」ノベンバー O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
古きエストニアの寒村での生活は窃盗と使い魔とともに... 狡猾さが至上命題の人間関係の中に在って一途な恋が美しくも残酷に雪原を木魂する幻想的モノクロ映画!!
19世紀のエストニアのとある貧しい寒村を舞台に、隣人間での窃盗が常態化した卑俗な処世術と若い男女の一方通行の悲恋のコントラストを鮮やかに描きつつ、死者や悪魔あるいは使い魔までビジュアルとして共存する幻想的なモノクロ映画。人間の美醜をシンプルなラブストーリーに集約させた構成はお伽噺的であり、峻厳な自然と陰影の深いキャラクターの相貌が浮世離れした世界観をより際立たせています。
人間が召し使いのように使役する使い魔クラットに、贄と交換でそのクラットを提供してくれる悪魔、11月1日の万礼節に現世に舞い戻る死者たち、そして果ては疫病まで人間ないしそれに準じた姿を伴って画面に現れます。一般的な邦画洋画であればそうした人ならざる存在の具体化は作品をチープ化させてしまうことも多いですが、本作ではそれらが違和感をもたらすどころか作品全体の異界感を見事に醸し出しており、それでいて互いにこすっからい騙し合いに終始しているところが滑稽でありブラックユーモアとも言えるでしょう。
それゆえに人間同士だけでなく悪魔や疾病とも騙し合う究極のコンゲーム映画でもあるのですが、モノクロの静謐な画面と瀟洒な演出が相俟って脂っこさは皆無な不思議な味わいでした。
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