「美しいものを手中にしていく 登場人物たちの愉快な連鎖」ミセス・ハリス、パリへ行く きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
美しいものを手中にしていく 登場人物たちの愉快な連鎖
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「旅上」 萩原朔太郎
ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背廣をきて
きままなる旅にいでてみん。
汽車が山道をゆくとき
みづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに。
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1957年のおはなし
『ディオールのラメのドレス』を目撃して、Mrs.ハリスは自分に魔法をかけます。
エイダ・ハリスは貧しい家政婦。
夫の戦死が、彼女にとって認めざるを得ない事実と判りました。独り身に戻ったエイダは新しい人生に踏み出さなくてはなりません。
そんな失意と傷心の中で、偶然見かけたのが、500ポンドのディオールのドレスだったのでした。
【この映画には特徴が2つある】
①ディオールの映画といえば、他にも何本もありますが、この映画では顧客限定での内覧会=「オートクチュール見本会」がハイライト。
エイダ・ハリスならずともモデルの登場には思わず声が出てしまいます。そのエレガンスが目を奪います。
ドレスそのものをしっかり観たい人にはとても良い映画だと思います。
そして更に面白いのは
②これは「労働者階級」を描くことに長けている「イギリスの映画」である ということ。
「おやっ?」と、その点に 気付いたのは、「家政婦がやってきた」と聞いたときに(ナターシャだけでなく=ここ重要)、モデルたち全員が控室から飛び出して来て、戸口の暖簾からエイダを親しく観察したシーンでした。
主たる舞台はパリであっても、登場人物すべてに「労働者」としてのキャラクターを持たせている。これは意識して脚色されていると思います⇒後述。
あと、新しく作られた映画としては「有色人種の登用」について、コンプライアンス重視がはっきり感じ取れました。
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先日 僕はディオールのフレグランスをふたつ買いました、
ひとつは自分用にお気に入りのDior Homme 2005年版Original、
もうひとつは友人=チェック映画館の支配人さんへのプレゼント。お世話になっていますからね。
出たばかりの新作香水 DIORIVIERA。
思い返せば、僕がディオールに惹かれるようになったのも、この映画の主人公同様 人生にへこたれていた時期だったかもしれません
だから ”やらまいか精神“ のMrs.ハリス=エイダさんには親近感をグッと覚えて応援をしたくなるのかもなぁ。
そして僕のDior推しは「5時から7時の恋人カンケイ」で、あの 棘のリングを見つけてからでしたね。
で、それ以来手に入れたのは、身の回りにはジャケツがひとつ、
きかん気な我が娘にはビジューのネックレスと、ローズ色のハット、そして小さな腕時計を。もちろんUSEDですがね。
そして今回はパルファムを求めたのです。
ディオールには独特の“粋人の世界”があります、
媚びない、自立した人間のためのファッションだから。
ちょっと不良で意地っ張りの、冒険者のアイテムだから。
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【下請けの労働者が主人公】
主演は レスリー・マンビルでした。
「ファントム・スレッド」で居丈高なマネージャーを演じた、加賀まりこ似のレスリー・マンビルが、本作では下町の家政婦のおばちゃんに大変身。柔らかな面持ちと 背中を丸めてちょこまか動くコメディエンヌぶりで、こちらの目尻はもう下がりっぱなしでした。
劇中、ハリス旋風に巻かれて乗り気になった人たちは=ハイブランドメゾンの社員であろうとも、警官やバスの車掌さん、そしてドッグレースのダフ屋たちであっても、
そして最後にはあのイザベル・ユペールでさえも、実は誰にも知られずもう一つの役割のために働いていた《社会の透明人間》だったこと。全員が下働きの労働者で、みんな同じ立場であったことが示されます。
物語の中で、彼らそれぞれが貴い労働者であり、愛すべき庶民であることが繰り返し繰り返し提示されました。
「大変な仕事ね・・」とエイダは事あるごとに口にしていました。メゾンでも、キャバレーでも。
それ、お気づきでしたか?
《ディオールのお針子・経理の男性・モデルの女の子たち》も皆んなおんなじ労働者として描かれています。
ゆえに全員が家政婦の冒険に興味津津。
即席応援団を結成して、ロンドンから来た“仲間”に駆け寄り、手を貸し、知恵を貸し、家政婦ハリスの夢をみんなでなんとか叶えようとするのです。
これ、昔のディズニー映画・・そうだな、《善意》というものにみんなが信頼を寄せていた頃のメリー・ポピンズの味わいなのです。
そしてなんでだろう、
こんなあり得ないおはなしなのに
親切な人たちから惜しみなく無尽蔵に繰り出される怒涛の優しさに 涙が溢れます。
映画の流れは、それはまったくもって非現実的な“おとぎ話”なのだけれど、でも、「詐欺」と「邪悪」と「脅迫」が満ちるこの悲しい世の中にあって、こういう映画でまるで子どものように笑ったり信じたり、そして夢の世界に踊ったり固唾を呑んだり・・
そういうかつての「子供心」を取り返すことって、大人になった僕たちも軽視しちゃあいけませんよね。
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後日談:
DVDを観たあとちょっと買い物に。
財布と靴を探しに行きました。(Diorではなくてイトーヨーカ堂ですよ)、
フロアで働いている人たちに売り場を尋ね、何気ない会話や声掛け、そして買い物が済んでから、こちらからの改めてのお礼を言いたくて先ほどの売り子さんを探し、双方に思いがけないほどの笑顔の花が咲きました。
楽しい一日を過ごさなきゃいけません。
この映画には、
確かに
《魔法の力》がありました。
そう、ドレスよりも美しいものが。
きりんさんに勧めて頂けなかったらこの映画見ずじまいだったかもしれません。本当にありがとうございます!そうなんです、もう建物から異なりますよね!天井の高さ、頑丈な床、椅子もテーブルも家具全てが靴を履いての前提ですよね~。
ミセス・ハリスのようにできるかもしれないことは、お片付け、整理整頓位だなあ。針仕事ダメ、料理ふつー、洗濯ふつー、あ、ベッドメーキングはやたら好きかも!(と、自分を慰める)
こんにちはtalismanさん。
この映画オススメして良かったです♥️
〉日本人にはキモノ。西洋人にはドレス。
これ、わかります。どうしても建物の作りが違うのでね。
靴のままで天井の高い邸宅に入り、殿方とダンスをし、立位で生活する姿がデフォルトとなるためには、西洋では靴からヘッドドレスまでのトータルな装備が必要なのです。そうしないと人間が建物に負けてしまうから。
対して、畳や障子の家屋に住む我々日本人は、正座をしている姿がデフォルト。
暮らしぶりと体型は連携しますからねー。
見ましたよー👗レスリー・マンビル素晴らしい!50年代はオートクチュールの方向変換時期なんですね。「ファントム・スレッド」でも、顧客が離れた、「シック」が求められる時代など、社会の流れの変遷を予感しました
きりんさん、初めまして、ホビットです😊共感&コメント、ありがとうございました!
労働者のお話等、ハッとさせられましたし、イザベル・ユペールさんもパキッと、素敵な女優さんでしたね✨✨
そして〜きりんさんの香水のお話はなんだか勝手に私が胸キュン!ですね〜素敵なレビューをありがとうございました✨✨
介護、大変ですね。お疲れ様です。うちは去年申し込みしました。本人気に入ったようで、今は気持ちが楽です。
そして〜オートクチュールですね、メモメモ…承知しました!
うちは子供の成人式の着物、どうしようか迷ってまして。オートクチュールでは無いですが、買うなんてとんでもない!と思ってましたが、厄払いになるそうで。…なんか長々とすみません〜💦お時間、ありがとうございました!
こんばんは😊
コメントしていただきましてありがとうございました😊
Diorオムの方は全く知りませんが、粋な生活なさってられますねぇ。
服はとてもとても、バッグも欲しいなとは思いますが、
リビエラはメゾン販売なので
さすがお目が高い、です。🧸
周りを笑顔にしてくれるハリスさん、素敵でした。
ですが、あのドレス、
いくらしたのか、
びっくりするお値段だったと思いますが。
一番お気に入りがちゃんと最後に手に入れられるように考えたストーリー、納得です。
今後ともよろしくお願いいたします🤲
お針子さんはじめ、
本当にその労働者の方々、皆、
Diorで働いている方出演みたいな。職場の雰囲気も現在もあんな感じで。興味津々でした。
リビエラ、プレゼントされた方🎁喜ばれたでしょうね。
私はもう一つの方に興味があります。💄
こんばんは♪、
共感いただきましてありがとうございました😊
何と申し上げていいのか、というレビューですね。
Dior好き?推し?ですね。
はい、ご推察通り、本作、ハリスさんの事よりDiOrに目が80%いってました。
Diorブランド名、オフィスビル、
オートクチュールドレス👗、、
また、支配人さん出た。Diorの香水。あげたの!? いゃ~、不適切なカンケイを匂わせて来ましたね。その、続きのご報告を楽しみにしております。
うちではフレグランスといえば消臭力のことです😅