「推しに恋すればいつでも青春」ミセス・ハリス、パリへ行く コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
推しに恋すればいつでも青春
良作。佳作。
一見すると、冴えない家政婦おばさんのお伽話。
しかし、第二次世界大戦後のイギリス&フランスというのが肝!
家族を戦争で失くし自ら働かなくては生きていけなくなった女性たちの代表として、ミセス・ハリスはそこにいて。
戦前は家庭を守り、夫をたて、透明人間のようにただ「存在するだけ」、下層と蔑まれた階級の女性たちが、「労働者」と「消費者」として変わっていき、生き方を選び、社会に対して声をあげていく。
ディオール本社に、金を支払わない富裕層の雇い主に、どんどん文句をつけるかっこよさ。
そんな時代を象徴するミセス・ハリスにみな惹かれて好きになり、彼女に優しく接することで幸せになっていく。
これは戦後に「庶民の女性がヨーロッパを豊かにした」という讃歌なのだと思いました。
さらに、今この時代に作られた意義。
「萌えはパワー」 「推しは生きる力」
かもしれません。
好きなことに邁進すれば、悪いことは起きないし、皆幸せになれる。
敵対することはないよ、と。
移民(人種)や階層、収入による分断などは、推し活の前に無意味だと。
夢を追うのに年齢は関係なく、推しに恋すればいつだって青春だよ、とミセス・ハリスが画面から語りかけてくるような気がしました。
そして、物語を彩るディオールのオートクチュールドレスの美しさ。
(実際のものではなく、映画用に改めてデザインしたもののようですが)
モデルのナターシャもよかった!
ちなみに映画『ミセス・ハリスの犯罪』とは何の関係もありませんでした。
コメントする